示談について

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示談とは

示談の意味と効果

示談の意味と効果

示談というのは簡単に言うと、
「被害者に謝罪し、金銭賠償その他の約束を取り決めて赦しを得る手続」
となります。

被害者がいなければ示談のしようがないので、薬物事犯や通貨偽造のように被害者となる人(法人含む)が存在しない事案では示談はできません。

また、罪を認めて謝罪することになるので、加害者が犯行を認めていなければ示談の前提を欠くこととなります(不同意性交等における同意の有無の認識が問題となるケースや、泥酔して犯行態様を明確に記憶していないケース等の例外はありますが)。
「犯罪となる行為は行っていない」
というのであれば、それは示談交渉ではなく無実・無罪を争っていくべきとなります。

示談の主な効果は
①刑事手続で有利な処分を得るための材料となること
②民事上の損害賠償等の紛争を解決・終結させること
この二点です。

示談が起訴・不起訴に与える影響

検察官はその事件に関する全ての事情を考慮して起訴か不起訴かを決めます。

罪名や犯行態様、被害の程度は当然として、

  • 犯行に至る経緯(なぜ犯行に及んだか、被害者の先行行為の有無等)
  • 犯行後の被疑者の行動(逃走したか、犯行を一旦否認していたか等)
  • 取調べにおける態度(罪を認めているか、反省の様子が窺えるか等)
  • 証拠の有無や内容(有罪判決を得るための固い証拠が十分あるか等)
  • 贖罪のための行動(示談の成否や贖罪寄付の有無、再犯防止措置等)
  • 既に受けたペナルティ(勤務先を解雇された、学校で処分された等)
  • 被疑者の属性(年齢性別、社会的地位、前科が資格に与える影響等)
  • 前科前歴の有無や内容(過去に犯罪歴があるか、その内容や処分等)

このようにありとあらゆる事情が考慮対称となります。

起訴か不起訴かを決めるためのこれらの材料には、

「今さらどうしようもないもの」
「今からでも何とかできるもの」

「価値や影響力の大きいもの」
「価値や影響力の小さいもの」

の差異が存在します。

「今からでも何とかできるもの」

「価値や影響力の大きいもの」
その最大のものが
「被害者との間できちんとした示談をまとめていること」
となります。

ただし、「示談」というものなら何でもいいというわけではありません。
示談の内容等によっても不起訴に与える影響の差が出てきます。

  • 宥恕文言の有無
  • 示談金の額
  • その他の取り決め等

こういった細部にまでしっかりと気を配った内容の示談でなければ、不起訴に向けたプラス効果を最大化することができません。

示談は被害者のためのものでもあること

刑事処分の決定前が最善のタイミング

なぜ加害者は多額の費用を負担して被害者と示談をまとめようとするのか。
それは
「被害者に対してきちんと謝罪と償いをしたい」
という思いがあることもそうですが、多くの場合最大の動機となっているのは
「示談することで処分や刑罰の軽減を求めたい」
というものです。

では起訴か不起訴かの処分が決まった場合、どうなるか。
例えば示談していない状態で加害者が「起訴」されたとしましょう。
この場合、加害者は何を考えるか。
「起訴されたなら今さら示談しても無意味だし示談なんかやめておこう」
こう考えます。

一方示談していない状態で加害者が「不起訴」となったら。
この場合、加害者は何を考えるか。
「不起訴になったならもう一安心、わざわざお金払うのはやめておこう」
こう考えます。

つまり、起訴であれ不起訴であれ、処分が決まれば示談に向けた加害者の積極的な動機は大きく減殺されるということです。
刑事事件の処分が決まる前で、加害者の方から示談の申出をしているとき。
これが被害者側にとって示談を成立させる最善のタイミングで、これを逃すと示談、というより被害者に生じた損害を回復させることが極めて難しくなってきます。

被害者に実際に生じた損害はどうなるか

犯罪被害に遭った被害者には様々な損害が発生しています。
怪我をして通院治療費がかかった。
事情聴取の対応で仕事を欠勤した。
嫌な思いや辛い気持ちを味わった。

何もせずにこれらの損害が勝手に補填されることはありません。

士道法律事務所は加害者側の示談交渉を行う弁護士の事務所ですが、被害者に生じたこれらの損害は加害者が負担するのが当然、これを少しでも補填するのが人の道理であると考えています。

もちろん、加害者からの示談の申出に応じなかったとしても、後で被害者の方から民事上の請求手続を取ることで損害を補填することは可能です。
可能ではありますが、それにどのくらいの手間と時間と費用がかかるかのイメージができている人は案外少ないものです。

どのようにして加害者の住所氏名を特定するのか。
どうやって適切な訴状や準備書面を用意するのか。
判決を得ても加害者が払わなければどうするのか。
弁護士に依頼したらどのくらい費用がかかるのか。
弁護士費用を払って手元に残る額はいくらなのか。
終結までにどれくらいの時間と手間がかかるのか。

被害者からの民事上の請求はコスパ・タイパが悪すぎて現実的ではありません。

けれども、刑事事件が進行しているときの示談であれば。
加害者側の弁護士と30分とか1時間とか話をして、ある程度納得できそうな条件を詰めて、示談書・合意書に署名押印する。
たったこれだけの手順で、
簡単に、確実に、短時間・短期間で、被害者が受けた損害を補填することが可能になります。

金銭以外に示談で被害者が得るもの

示談で取り決めるのは示談金(お金)のことだけではありません。
金銭の支払い以外に色んな約束を取り決めることが可能です。

  • 加害者が被害者に接近接触しないこと
  • 加害者が特定エリアに立ち入らないこと
  • 盗撮画像を削除済み、流出させないことの誓約

示談署にこれらの条項を入れることで被害者が得るのは
「精神的な安心」
という、目には見えずともとても大事なものです。

次に、示談に応じなかったからといって加害者が確実に起訴されるとは限りません。
示談不成立でも不起訴となるケースはいくつもあります。
敢えて踏み込んで言うと、士道法律事務所は刑事示談交渉に特化した弁護士の事務所なので、
「この罪名、この犯行態様で、こういう状況。相手方(被害者)との示談交渉において相手方の過剰要求等があった場合には、こういう措置を講じてこんな意見書を作ればこの事件は高確率で不起訴になる」
ということを統計的に把握しています。
実際のところ、士道法律事務所の単純な示談成立率(示談が成立した件数/全受任件数)は約75%であり、逆算に言うと全体の約25%では示談が成立しなかったということになります。
しかし、この「示談が成立しなかった25%」においても、示談以外の次の手を打つことによって、その6割程度は最終的に不起訴となったり、刑事事件化せずに終わったりしています。

これは、
「被害者が示談の話を蹴ったとしても加害者が不起訴となることが十分ある」
ということで、加害者が(弁護士費用はともかくとして)何の負担もなくノーペナルティで終わる一方で、被害者は何も得るものがない、ということを意味します。

そういう事態を考えると、被害者が加害者の示談の申出に応じることによって、
「示談金の支払いという確実な負担、確実なペナルティを与えることができた」
と見ることもできるようになります。

そして、案外無視できないのが
「事件について自分の中で一つの区切りをつけられる」
ということ。
どの事件、どの被害者であっても
「給料〇か月分の示談金もらえてよかった!」
などという人はまずいません。
加害者のことを心から赦した、完全に納得できた、ということはなくとも、それを心の内に飲み込んで
「示談ということでよい」
とするのです。

示談に応じなかった場合、事件のことをいつまでも引きずってしまう被害者もいます。
その人の中ではいつまでも終わりがなく、ふとした瞬間に事件を思い出して符の感情が渦巻いてしまうことでしょう。
それはある種の呪いとも言えます。
けれども、
「加害者との示談に応じる」
という結論を自ら下した人は。
それが形式的なものであったとしても、その人の中では
「あの事件は終わったんだ。自分でちゃんと終わらせたんだ」
という区切りがつくことになるはずです。

このように、示談は被害者のその後の人生にも大きな影響を与える、被害者のためのものでもあるのです。

なぜ弁護士でないと示談交渉は難しいのか

被害者は加害者本人とのやり取りを嫌がる

示談交渉を行う現実的な手段は基本的に二つしかありません。

「対面で直接話をする」
または
「電話をかける」
この二つです。

無論、メールだとかLINEだとか手紙だとかの手段も理論上は存在しますし、被害者側でごくごく稀にこれらの連絡手段を希望してくる人もいますが、普通は「会って話す」か「電話する」、この二択です。

では、自分が痴漢や盗撮、児童買春や不同意性交等の性犯罪、万引きや置き引きといった窃盗系の財産犯、駅や居酒屋でのトラブルから暴力を振るわれた暴行・傷害の粗暴犯の被害者になったと仮定してみてください。
その上で、加害者である犯人と直接顔を突き合わせて示談の話をしてみてもいい、などと思えるでしょうか?
この問いに「YES」と答えた方は、被害者の気持ちを全く理解できていないという証左ですので直ちに猛省してください。

被害者から見て加害者というものは、単によく知らない相手、あるいは事件前からの知り合いというわけではありません。
すでに自分に対してわいせつ行為をしてきた、物を盗んだ、暴力を振るってきた、そういう違法な行為をしてきた、全く信用のおけないに成り下がっているわけです。
そのような人物と直接顔を突き合わせて示談の話をしようという豪胆、物好きな人間はそうそういません。

では直接顔を合わせない電話ならいいのではないか。
これはまた考えが甘すぎです。
現代において電話番号(携帯電話番号)というのは、個人に直接アクセスしたり会員登録等で個人を特定するための重要なツールであり、個人情報の一つと考えられています。

加害者と電話で直接話をするということは、この重要な個人情報を、先と同様に全く信用のおけない人間である加害者に開示するということを意味します。

「非通知設定で電話すればいいのでは?」
非通知設定にするということは、加害者から被害者に電話をかけることができず、常に被害者から加害者に電話をかけなければならないということです。
細かい話かもしれませんが、被害者の方が
「何でこっちが毎回通話料を負担して話したくない相手と話をしないといけないのか」
となることは想像に難くありません。

士道法律事務所では、捜査機関を通じて被害者との示談交渉希望を打診する際に、
「開示された被害者の連絡先は弁護士限りに留めており、加害者本人やその家族に開示することは一切ありませんので、その点はご安心ください」
という一文を必ず入れています。

そして捜査機関から被害者の連絡先が開示される際、かなりの頻度で警察官や検察官から
「被害者の名前や電話番号は弁護士だけに伝えるということで被害者の了承を得ているので、加害者本人には被害者の連絡先等を絶対に教えないでほしい」
と念押しされます。

被害者の個人情報は、ここまで気を遣って、弁護士という職種の信用性があってやっと開示されるものなので、加害者本人やその家族による示談交渉は現実的に無理と考えてもらって結構です。

交渉の過程で何に気を付けるべきか

たまたま被害者が自身の個人情報に無頓着な性格の人で、被害者の電話番号が開示され、運良く加害者本人やその家族にて被害者と示談の話を開始できたとしましょう。

どういう順番で、何について、どんな口調で、どのように話を進めていきますか?

示談というものを軽く見ている人は一定数存在します。
「殊勝な態度で、まずは謝って、反省を示して、お金を払うと言えばいいんでしょ?」

確かに、ものすごく雑にまとめると示談とはそういうものです。
しかし、

  • 罪名や犯行態様に応じた被害者の心理や感情をどう読むか
  • どういう順番で何を話せば被害者の怒りを買わずに済むか
  • 被害者のタイプに応じた最適な口調や話し方の抑揚は何か

このあたりの理解の深さ、幅の広さによって示談の精度や成功率には格段の差が出てきます。

示談の内容が結果を左右する

さらにラッキーが重なって、とても穏やかで物分かりの良い被害者に巡り合い、示談をまとめる方向で話がつきそうになったとしましょう。

どんな内容の示談を取りまとめますか?

示談はただ単にお金を払う約束をして、そのとおりに払えばよいというものではありません。
加害者にとって有利に働く条項として、例えば宥恕文言だとか債権債務不存在条項といったものがあります。
これらの条項が入っていなければ、

  • 示談してお金を払ったのに十分な効果が発揮されず不起訴にならなかった
  • 示談してお金を払ったのに後になって被害者から追加の請求を受けた

こういった事態が発生することがあります。

というより、士道法律事務所の過去の事例で実際にこういうものがありました。
法律相談を受けて、このくらいなら自分でも示談ができると考えて、独断で勝手な示談を取りまとめた結果、被害者にお金を払った後に警察官から不備を指摘されて改めて士道法律事務所に泣きついてきたとか。
事件発覚後に当事者間で勝手に示談をして、後日被害者から「やっぱり納得できないから追加でお金を払ってほしい」と言われてようやく弁護士のところに相談に来たとか。
最初から弁護士に依頼してきちんとした示談を取りまとめていれば回避できたはずのことです。

また、加害者側に有利ならやみくもに宥恕文言や債権債務不存在条項を入れておけばいい、入れなければならないというわけではありません。
被害者の方でも
「加害者はこういう条項を欲しがっている」
ということをネットで調べたり弁護士に相談したりして把握していて、
「宥恕文言を入れてほしかったらもっと金額を積み上げろ」
と言ってくることがあります。

宥恕文言の有無がその事案においてどのくらい重要なのか、どの程度の意味を持つのか。
こういったことは刑事示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば把握していることも珍しくありませんし、何なら検察官に宥恕文言の要否を直接問いかけることもあります。

事案によっては債権債務不存在条項を入れない方が示談がまとまりやすく、後で現実的な問題が起きる可能性も低いので、無理に債権債務不存在条項を入れないとすることもあります。

示談金(解決金)についても、被害者がOKと言えばどんな金額であっても不起訴に向けた最大の効果を発揮するというわけではありません。
金額が低すぎると検察官が
「この金額ではペナルティとして不十分。示談が成立したことを一定程度評価はするが、もう少し罰を与えておかないとバランスが取れない」
と考えることもあります。

このように、
「どのような内容の示談をまとめるか(まとめようとするか)」
が最終的な刑事処分や経済的負担に影響を与えてくることがあります。

当事務所の示談交渉

示談成立率

刑事事件の加害者となってしまい、被害者との示談のために
「どこのどういう弁護士に依頼しようか」
と考えるとき。
一番気になるのは
「この弁護士はどの程度示談交渉を得意としているのか」
ということのはずです。

その判断材料となり得るものはいくつかありますが(専門性、過去の依頼者のクチコミ、法律相談における弁護士のトーク技術等)、最も参考となるのは「過去の実績」でしょう。

この記事を作成している時点(2026年5月)において、士道法律事務所の過去の刑事事件の示談交渉の解決事案の数値は以下のようになっています。

示談の成否が判明している事案 361件
示談が成立した事案 268件
示談が成立しなかった事案 93件

単純にこれをパーセンテージに置き換えると以下のようになります。

示談成立 約74.2%(268件/361件)
示談不成立 約25.8%(93件/361件)

示談が成立したのは大体4件に3件、成立しなかったのは4件に1件の割合です。

ただ一概に
「示談が成立しなかった事案」
といっても、
「なぜその事案では示談が成立しなかったのか」
という原因、理由の部分はそれなりに大事であろうと思います。

ここで、この「示談が成立しなかった事案(93件)」の中には、
「弁護士が被害者と話をすることすらできなかった事案」
例えば、
「盗撮事件で被害者がどこかに行ってしまって警察も被害者の身元を特定できなかった」
「被害者が『示談とか興味ないです』と述べて連絡先が開示されず交渉自体不可だった」
といったケースが含まれています。
もちろん、交渉自体を拒否した被害者をそれなりの確率で翻意させて交渉可能な状態とする手立てもありますし、そこから示談成立に持っていったケースもいくつかありはしますが。
弁護士の能力と無関係なところで示談不成立となったものを含めてしまうと、弁護士の正確な能力は測れません。
そこで、上記データに「弁護士が被害者と話ができたケース」という絞り込みを加えると以下のようになります。

交渉自体を開始できた事案 300件
示談が成立した事案 268件
被害者と話ができて示談が成立しなかった事案 32件

これをパーセンテージに置き換えると以下のようになります。

示談成立 約89.3%(268件/300件)
示談不成立 約10.7%(32件/300件)

つまり、被害者と話をすることさえできれば、9割弱程度の事案で示談をまとめてきたということです。

ただし、これは
「これから依頼しようとしているあなたのケースも75%とか90%とかの確率で示談をまとめられますよ」
という話ではありません。
単に過去の解決事例を統計データとしてまとめたらこうなった、というだけの話です。
示談交渉を開始できるか否かは被害者の性格や価値観その他の事情で大きく左右され、ハッキリ言ってしまえば最初から無理な事案はどんな優秀な弁護士が対応しても無理です。
また、示談交渉を開始できたとしても、被害者が相場を逸脱した過大な要求をしてくれば弁護士の方で示談の話を蹴って終わらせることもあります。

示談成立率は士道法律事務所の過去の統計データとして参考資料の一つにする程度に留めておいてください。

示談交渉の進め方

刑事事件の加害者の弁護人として被害者とどのように示談の話を進めていくか。

警察や検察から被害者の連絡先が開示されるとき、その連絡先は基本的に被害者本人か配偶者または親の電話番号です。
つまり、電話をかけるところからスタートします。

弁護士から被害者に電話をかけたとして、どんな風に話をするか。

「加害者は示談を希望しています。これこれの条件で示談してください」
用件、結論部分はこれなので、最終的にこれを被害者に伝えるということは決まっています。

ただし、
どういう順番で、何を、どういった口調で、どのように伝えるか。
この経路や手段の部分をどれだけ深く考えているかで示談の成否は大きく変わってきます。

どんな事案でも100%確実に示談をまとめられる方法というものは存在しません。
けれども、7~8割の事案でまず間違いなく示談をまとめられる手法は存在します。
士道法律事務所はこの手法を取り入れているので、だから前述のような高い割合で示談をまとめることができています。

刑事事件の示談交渉ではランダムな相手方が抽出されるわけではありません。
まず、必ず「加害者」と「被害者」という固定化された関係性が存在しています。
次に、罪名によって行為態様はほぼ決まっており、加害者・被害者の属性も偏重しています。
例えば「性的姿態等撮影(盗撮)」であれば、被害者は99%が女性、そのうち4分の3は成人女性で4分の1は女子中高生、ごく稀に女子小学生が含まれる、場所態様は8割方が公共施設でのスマホによるスカート内盗撮で、残り2割が更衣室、浴室、トイレ、風俗店でのスマホまたは小型カメラによる裸体等の盗撮、交渉窓口となるのは被害者が未成年であればほぼ100%が親で父親が出てくる確率は30%程度、母親が出てくる確率は70%程度、被害者が成人であれば約9割が被害者本人による対応、約1割が親または夫による対応。
こういった偏りが350件を超える実際の刑事事件の示談交渉事例から統計データとして浮かび上がってきます。
つまり、被害者にある程度の共通項が存在しているということで、価値観や思考の方式にも一定の傾向がみられるということです。

これを丁寧に読み解いて、
「どういう話の持っていき方をすれば被害者を傷つけたり怒らせたりすることなくこちらの用件を正しく伝えることができるだろうか」
ということをしっかり考えれば、
「安定してスムーズに話を進められる汎用的な話の手順や話法」
が見えてきます。
士道法律事務所ではこの手順や話法を全ての示談交渉のベースに据えています。
だから、よほど頑なでイレギュラーな被害者に当たらない限り、話をすることさえできれば9割程度の事案で示談を取りまとめることができているのです。

この手法はFBIが取り扱う犯罪捜査や人質事件で行われているネゴシエーターによる交渉術とも共通する部分が多く、「行動変容の段階モデル」と呼ばれています。

  • まずアクティブリスニング(積極的傾聴)から始める
  • エンパシー(共感)を示してラポール(信頼関係)を構築する
  • 信頼に基づいて相手方の考えに働きかけを行う
  • 示談成立に向けて被害者の方からの自発的な行動変容を促す

士道法律事務所で行っている示談交渉では被害者の方から
「いや、弁護士さんが悪いことしたわけじゃないからこんなん言っても仕方ないですけどね」
「弁護士から連絡が来るって聞いて身構えてましたけどお話できて本当によかったです」
と言われることがよくあります。

かなり重めの性犯罪事案で被害者のお母さんと話をして、途中から万博の話で盛り上がったり娘さんの進路について相談されたりして、笑い合いながら示談をまとめたこともあります。

かつて被害者として示談交渉をした相手方が全く別の事件んで加害者となったときに
「前に示談の話をさせてもらったときに飯島弁護士の対応がとても良かったので」
と示談交渉を依頼してきたこともあります。

一般的な弁護士からするととても信じられない話かもしれませんが、士道法律事務所ではこのように被害者の共感を得てしっかりと打ち解けて、しかし締めるところは締めるという形で示談を取りまとめています。

相手方が弁護士と話をすること自体を拒否したら

相手方が弁護士と話をすること自体を拒否したら

相手方が
「示談とか結構です。厳罰に処してもらえたらそれでいいです」
といって連絡先の開示自体を拒んだ場合。

この場合は基本的にはどうしようもありません。
ほとんどの事案はよく知らない相手に対する突発的な犯行なので、相手方が交渉自体を拒否して連絡先を開示しないのであれば連絡の取りようがなく、連絡が取れないなら説得のしようがないからです。

たまたま相手方の家を知っているとか、電話番号がわかるとかの場合には、相手方の家に押しかけたり何度も電話をかけたりして
「とりあえず話だけでも! 1回、ちょっと話すだけでいいので!」
と頼み込んで相手方の根負けを狙うという手もありはしますが。
士道法律事務所ではこういったことは行っておらず、推奨もしていません。
それは、
「(少なくとも今は)示談とか事件についての話をしたくない」
という被害者の気持ちを真正面から踏みにじる行為に等しいからです。

もっとも、相手方が一度示談交渉を拒否したらそれではいおしまい、というわけではありません。

前述の通り士道法律事務所には多数の解決事例が存在するので、
「こういう事案、こういう状況で、こういう断られ方をした場合、適切なタイミングでこういう手法で再打診を要請したらそこそこの確率で相手方が翻意して交渉が可能になる」
という手法も用意しています。これを実践したことで、最初は交渉自体を拒否していた相手方と話をすることができるようになり、きちんと話をしていって最終的に示談を取りまとめたというケースも複数存在します。

ただ、どの事案のどういう場合でも使える手というわけではなく、交渉可能になる割合も決して高いわけではないので(大体20%程度)、過度の期待は寄せず、交渉自体が不可となれば示談不成立を前提とした次の手を講じることをお勧めします。

示談が成立しない場合の対応

示談以外の方法で不起訴を目指す

検察官はその事件に関する全ての事情を考慮して刑事事件としての処分を決めます。
示談成立という事実は不起訴に向けてかなり大きいプラスの影響力を有していますが、あくまで考慮要素の一つでしかなく、絶対的なものではありません。
したがって、
「示談成立=不起訴」
ではないし、
「示談不成立=起訴」
でもない、ということになります。

したがって、示談が成立しなかった場合は示談以外の他の要素を積み上げることで不起訴や処分の軽減を目指すこととなります。

ここで検討されるのは「8.4.2」で挙げたようなもの、

  • 刑事贖罪寄付
  • 相手方との示談交渉の経過等を記載した弁護士の意見書
  • 特殊な状況下で使うことができるいくつかの手立て

といったものがメインとなります。

ここで気になるのは、これらの示談以外の手法が不起訴に向けて一体どのくらいの効力を発揮しているのか、ということでしょう。

「9.4.1」でご紹介したように、士道法律事務所の示談成立件数、示談成立率は以下のようになっています。

示談成立 約74.2%(268件/361件)
示談不成立 約25.8%(93件/361件)

この「示談不成立」だった93件のその後の処分内訳は以下のようになっています。

非事件化 約7.5%(7件/93件)
不起訴 約40.9%(38件/93件)
略式起訴 約36.5%(34件/93件)
公判請求 約15.1%(14件/93件)

つまり、示談ができなかったとしてもちゃんと然るべき措置を講じていけば半数程度の事案は刑事事件化せずに終わるか不起訴処分、つまり前科が付くことなく終わらせることができている、ということです。

起訴された場合の対応

「示談交渉専門ということは起訴されたら刑事裁判は対応してもらえないんですか?」
といった質問を時折受けることがあります。

この質問に対する回答は
「NO」
つまり、
士道法律事務所では起訴された場合の刑事裁判の対応も当然に可能です。

士道法律事務所では受任した刑事事件において片っ端から示談を成立させてしまうので、全体の約75.6%、大体4分の3の事案は不起訴または刑事事件化前の解決となっています。

もっとも、示談が成立させられず公判請求を避けられなかったとか、示談は成立させたけれども被疑者のやった内容が悪過ぎた、前科が多過ぎたとかで公判請求された事案もいくつか存在しています。

これらの公判請求事案は、現時点(2026年5月時点)において、
32件
が存在しています。

ちなみにこの32件を示談の成否で分けると
示談成立で公判請求:15件/32件
示談不成立で公判請求:17件/32件
となります。

これら32件の中には、
「示談交渉ではお世話になりましたが裁判は別の弁護士に任せようと思います」
「これ以上費用をかけるのは親に申し訳ないので裁判は国選弁護人に頼みます」
「名古屋の裁判所で起訴されたので刑事裁判対応は名古屋の弁護士を探します」
といった理由で士道法律事務所で継続対応しなかった事案が7件あります。

残りの25件は
「示談交渉で丁寧に対応してもらえたので刑事裁判も引き続きお願いします」
ということで士道法律事務所で公判も対応しました。
依頼者の要望を受けて控訴審までお付き合いした事案もあります。

士道法律事務所は圧倒的に示談が得意で「刑事裁判となる前」に事件を解決してしまうことが多いため、他の刑事事件専門の法律事務所と比較して刑事裁判の対応件数はそこまで多くはありません。
もっとも、依頼者の希望があれば示談交渉・捜査弁護に引き続いて公判弁護の対応も行っており、そちらでも十分な結果を挙げています。

士道法律事務所は
「示談交渉しかしない、できない弁護士」
ではなく、
「刑事裁判まで対応する必要が少ないが、必要となれば最後までお付き合いする弁護士」
の法律事務所ですので、この点はご安心ください。

Q&A

示談金の相場はどのくらいですか?

事件の内容や被害の程度によって大きく異なります。
一般的な目安として、盗撮や痴漢などの性犯罪では数十万円程度、暴行・傷害事件では被害の程度に応じて数十万円から百万円程度となることが多いです。

被害者が示談に応じてくれない場合はどうなりますか?

示談交渉に応じていただけない場合でも、不起訴を目指す方法はあります。
贖罪寄付(反省の意を示すために公的団体に寄付を行うこと)や、弁護士から検察官への意見書提出など、状況に応じた対応を行います。
当事務所では、示談が成立しなかったケースでも約6割は他の手段によって不起訴を獲得しています。

示談交渉は自分や家族でもできますか?

法律上は禁止されていませんが、現実的には難しいケースがほとんどです。
被害者の方の多くは、加害者本人やその家族との直接の交渉を拒まれます。
また、示談書の内容に不備があると、後から追加の請求を受けるリスクもあります。弁護士を通じて交渉を行うことをお勧めします。

示談が成立したら必ず不起訴になりますか?

示談の成立は不起訴の判断に大きく影響しますが、必ず不起訴になるとは限りません。
事件の内容や被害の程度、前科の有無など、様々な要素が考慮されます。
ただし、示談が成立して被害者の方が処罰を望まないという意思を示していただければ、不起訴となる可能性は大きく高まります。

弁護士 飯島 充士 Iijima Atsushi

執筆者

士道法律事務所 Shidoh Law Office

弁護士飯島 充士 Iijima Atsushi

プロフィール

  • 生年月日:1979年1月
  • 特技:空手(和道流初段)
  • 趣味:熱帯魚の飼育、温泉旅行
  • 座右の銘:「人間万事塞翁が馬」

経歴

  • 名古屋大学、南山法科大学院を卒業後、司法試験に合格
  • 岐阜での司法修習を経て、大阪弁護士会に登録
  • 弁護士法人大江橋法律事務所で弁護士業務の基礎を学ぶ
  • 同事務所退所後、岡田和義法律事務所に移籍
  • 岡田和義弁護士の引退に伴い、士道法律事務所を設立
  • 2026年3月 弁護士法人 士道 設立

所属

  • 大阪弁護士会
  • 大阪弁護士会 交通事故委員会
  • 大阪弁護士会 遺言・相続センター運営委員会
  • リーガルアクセスセンター(LAC)登録弁護士

大阪本部 06-6365-7650

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