- HOME>
- 刑事裁判で執行猶予にしてほしい
公判請求・略式起訴・即決裁判手続
起訴の種類
検察官が下す刑事事件としての処分には「起訴」と「不起訴」があります。
このうちの「起訴」には大きく分けて以下の三つがあります。
・公判請求
・略式起訴
・即決裁判手続
ただし「即決裁判手続」は実際に使われることがほとんどないので、
「起訴には『公判請求』と『略式起訴』の二種類がある」
という認識でも実務上はさほど問題がありません。
公判請求の概要
「公判請求」というのは所謂普通の刑事裁判で審理を行うための起訴処分です。
裁判ドラマでよく見るような感じのもので、定められた公判期日に裁判所に出頭し(または留置施設から出頭させられ)、尋問その他の手続を経て判決が言い渡されます。
これが最も基本的な刑事裁判の類型で、公判で扱える事件の制限や言渡し可能な刑罰の制約等は特にありません。
略式起訴の概要
「略式起訴」というのは特定の状況下でのみ使える簡易な刑事裁判手続です。
公判のように裁判所に出頭する必要はなく、後日裁判所から送られてくる通知書に従って所定の罰金を納付すればそれで刑事裁判としての手続は終わります。
イメージ的には交通違反の反則金制度に近いと言ってよいでしょう。
「略式」という言葉のイメージ通り簡略化された手続です。
刑罰としては罰金刑が確定している、そのため罰金刑の設定がある罪名でしか使うことができない、事実関係を争っている否認事件は略式起訴にできない、検察官が略式起訴にしようと考えて被疑者もこれに同意することが必要、といった制限があります。
公判(刑事裁判)について
公判の流れ
公判の大まかな流れは以下のとおりです。
【起訴(公判請求)】
↓
【第一回公判期日】
人定質問
↓
起訴状朗読
↓
黙秘権の告知
↓
罪状認否
↓
証拠調べ(検察・弁護人)
↓
論告・求刑
↓
最終弁論
↓
最終陳述
↓
結審
↓
【第二回公判期日】
判決言渡し
起訴~第一回公判期日
検察官によって通常の起訴、すなわち公判請求がなされると、それまで「被疑者」と呼ばれていた加害者の名称が「被告人」に変わります。
単なる法律上の呼称の変化に過ぎないので、呼び名が変わることで何かが劇的に変化するということはありません。
「被疑者」が警察署等で勾留されていた場合、起訴されて身分が「被告人」になると
保釈(勾留からの身柄解放)
という手続を取ることが可能になります。
簡単に言うと、起訴後に裁判所に対して保釈請求を行い、保釈が認められたら裁判所が定めた一定額の保釈保証金を預託することで身柄拘束が解かれて自由の身となる、ということです。
起訴された後は、第一回目公判期日までに被告人と弁護人にて打ち合わせを行って期日での対応の準備を進めていくことになります。
第一回公判期日(冒頭手続)
人定質問、起訴状朗読、黙秘権の告知、罪状認否は
「冒頭手続」
と呼ばれます。
「人定質問」は、裁判官が被告人に住所、本籍地、生年月日、氏名等を尋ねて人違いでないかを確認する手続です。
「起訴状朗読」では検察官が起訴状を読み上げ、被告人がいつ、どこで、誰に対して、何を、どのようにしたのか、それが刑事上のどの違法行為に該当すると考えられるかということを簡潔に示します。
「黙秘権の告知」では裁判官が被告人に対し、
「あなたには黙秘権という権利があります。今回の事件に関して、この法廷で質問されたことについてあなたは何かを答えてもいいし、最初から最後まで黙っていてもいいし、答えたい質問だけを選んで答えても構いません。ただし、あなたがこの法廷で述べたことは、あなたにとって有利にも不利にも働きます。そのことを踏まえて慎重に受け答えしてください」
といったことを告げます。
「罪状認否」は、前項の「黙秘権の告知」を前提として、「起訴状朗読」で検察官が読み上げた事実について何か誤っているところ、被告人の認識する事実と異なっているところがあるかないかを裁判官が被告人に尋ねます。
「間違いありません」と答えればその事件は事実関係を認めた自白事件として、比較的簡易な手続でサクサクと進んでいきます。
「ここがこういう風に違います」と答えると、その内容にもよりますが、事実関係を争っている否認事件として、時間と手間をかけて複数回の期日を開催して慎重に有罪または無罪の判断がなされていくこととなります。
第一回公判期日(証拠調べ)
「証拠調べ」の手続では、まず検察官が「冒頭陳述」というものを行います。
これはその事件において、被告人を有罪と判断してどういう刑罰を与えるのが相当かということを裁判所に判断してもらうために、検察官はどういう事実をどのように立証しようと考えているか、という大まかな計画を述べる手続です。
「冒頭陳述」が終わったら、検察官がその裁判で使おうと考えている諸々の証拠について、弁護人(被告人)はそれを証拠として取り調べることを許諾するか否か、ということについて弁護人の意見が尋ねられます。
弁護人が
「全て同意します」
と述べたら、基本的に検察官が請求した証拠は全て証拠調べの対象となります。
弁護人が
「甲●号証、乙●号証については同意。その余は不同意」
と述べたら、同意した証拠は基本的に証拠調べの対象となり、同意しなかった証拠については検察官がその証拠調べを取り下げるのか、別の立証方法を予定しているのかといったことを述べます。
証拠として採用されたもの、大半は現場検証の写真やその説明書、被害者や被告人の供述調書といったものですが、これらについては証拠採用後に裁判官が目を通して内容を確認します。
調書等の紙に記載されたものや凶器のような物品は「書証」「物証」と呼ばれ、その内容や形状その他を裁判官が自身の五感をもって確認します。
一方、証人等に質問を投げかけて出てきた回答を証拠とする場合、これらは「人証」と呼ばれ、回答した内容や回答するときの態度等から、その証言の内容が信用できるものであるか否かを裁判官が判断していきます。
第一回公判期日(弁論手続)
「証拠調べ」が終わったらその結果を踏まえて検察官が「論告・求刑」を行います。
これこれの証拠から被告人が罪を犯したことは明白で、証拠から示される各種事実から被告人に対してはこういった刑罰を与えるべきである、という検察官側の意見を述べる手続です。
「論告・求刑」が終わったら弁護人が「最終弁論」を述べます。
公訴事実に争いがないのであれば、被害者との間での示談の成立や贖罪寄付、再犯防止に向けた措置、家族による今後の監督等、被告人に有利な事情を挙げていって「執行猶予」その他の有利な判決を求める旨を述べます。
公訴事実を争っているのであれば、これこれの証拠から被告人は犯人ではない、被告人の行為は法律で定められた違法行為に該当しない、よって被告人は無罪である、と言ったことを述べることになります。
これらが終わったら、最後に被告人が自身の意見等を述べる機会が与えられます。
ただの意見なので、何を述べるのも、あるいは述べないのも自由です。
ここまでの手続が全て完了したら、証拠調べやそれぞれの意見・見解を述べる手続は終結したという扱いになります。
第二回公判期日(判決言渡し)
弁論手続が終わると一定の期間(2週間から2か月程度)を置いて「判決言渡し」の期日が設定されます。
これはその名のとおり、その刑事裁判における結論である「判決」を言い渡す期日です。
判決言渡し期日では被告人と弁護人、検察官、裁判官が出廷し、裁判官が言い渡す判決を聴きます。
ほとんどの事件、99.9%は有罪の判決となり、弁論の全趣旨を踏まえた判決が言い渡されます。
多いのは
「被告人を拘禁〇年〇月に処す」
という実刑判決か、
「被告人を拘禁〇年○月に処す。ただし、この裁判が終わった日から〇年〇月の間、その執行を猶予する」
という執行猶予判決です。
実刑判決というのは、実際に刑務所に入ってもらうという判決です。
実刑判決となった場合、それまでに保釈されていたとしてもこの時点で保釈の効力は失われ、廷吏に付き添われて収監の手続に移行することとなります。
一旦は元の留置施設(警察署等)に戻されて、後日収監される刑務所が決まったらそちらに移送されます。
執行猶予判決というのは、すぐに刑務所に入ってもらうのではなく一定期間様子を見るという判決です。
執行猶予期間というのが3~5年の間で設定され、この期間中にまた犯罪行為に及ぶことなく平穏に静かに暮らしていれば、執行猶予期間の満了をもって拘禁刑の効力は消滅し、刑務所に入れられることはなくなります。
一方、この執行猶予期間中にまた何か犯罪行為に及んだ場合、執行猶予が取り消され、一旦猶予されていた刑罰に加え、次の罪の刑罰の分も合わせて刑務所に入れられる可能性が高くなります。
例えば、電車内で痴漢をして「不同意わいせつ」の罪で起訴されて、
【拘禁2年 執行猶予4年】
という刑が言い渡されて、この判決が確定した3年後に今度は商業施設で盗撮をして「性的姿態等撮影」の罪で起訴されて、前回の「不同意わいせつ」の執行猶予が取り消されて今回の「性的姿態等撮影」が
【拘禁1年】
という刑となった場合。
執行を猶予されていた「不同意わいせつ」の2年分と、新たな「性的姿態等撮影」の1年分、合計3年刑務所に入れられる可能性が高くなる、ということです。
なお、執行猶予期間が満了すればその分の刑罰を受けることはなくなりますが、執行猶予判決もれっきとした前科ではあります。
したがって、執行猶予期間が明けたからと油断してまた犯罪行為に及ぶと、
「こいつは前回の執行猶予判決で全然反省ができていない」
ということで次は実刑判決となるおそれが強くなるので注意が必要です。
執行猶予判決の場合、そこで刑事事件の手続は終了となり、晴れて自由の身となりそのまま自宅等に帰ることができます。
控訴審
第一審の判決に納得できなかった場合、「控訴」してもう一度裁判所の判断を仰ぐことができます。
控訴を望む場合は、第一審の判決言渡しから2週間以内に、上級裁判所に宛てた控訴状を第一審判決を言い渡した裁判所に提出することとなります。
控訴審では第一審の似た流れで手続が進んでいきます。
ただ、基本的な証拠調べは第一審で終わっているはずなので第一審の手続と比べるとかなり簡略化された手続となります。
控訴理由のほとんどは「量刑不当(言い渡された刑罰が重すぎるのでもっと軽くしてほしい)」ですが、何も状況が変わっていないのに
「再度の審理を!」
と言っても基本的に結論は変わりません。
そのため、第一審の判決言渡し時点では存在していなかった新たな事情、例えば
「第一審のときには被害者との示談ができていなかったが、第一審の判決言渡し後に被害者と示談することができた」
といった事情の変化が生じている場合でないと判決を見直してもらうのは難しいとなります。
Q&A
起訴にはいくつか種類があるのですか?
刑事事件の処分としては大きく分けて「起訴」と「不起訴」があります。
「起訴」の中には「公判請求(ドラマで見るような公開法廷での裁判)」「略式起訴(罰金確定で書類審査だけの交通反則金制度のような手続)」「即決裁判手続(公開法廷での簡易な裁判、実際にはほとんど使われていない)」があります。
公開法廷での刑事裁判はどんな流れで進むのですか?
大雑把に言うと、
「指定された日時に裁判所で裁判を行う。誰がどういうことをした件について裁判するのかを最初に確認し、証拠物を取り調べたり証人や被告人の尋問を行ったりする。検察官は被告人の悪いところ、弁護人は被告人の良いところを主に立証していって、最終的に裁判官がどういう刑罰を下すかを決める」
といった流れです。
執行猶予判決とは何ですか?
本来であれば一定期間刑務所に収監すべきところを、被告人に有利な事情(初犯であるとか、示談が成立しているとか)を汲んで、すぐに刑務所に入れるのではなく一定期間様子を見よう、とする判決です。
3~5年の執行猶予期間に悪事を働かずおとなしく過ごしていれば刑務所に行かずに済みますが、執行猶予期間中にまた罪を犯した場合には一旦猶予されていた刑罰が原則として後から執行されることになります。
