その他

その他の罪名の事案

その他の罪名の事案

士道法律事務所に持ち込まれる刑事事件は、性犯罪、暴行・傷害、窃盗といったメジャーな罪名の事案が多数を占めています。
もっとも、これら以外のややマイナーな罪名の事案についても一定数の相談があります。
士道法律事務所では、被害者が存在して示談が可能な事案であれば罪名を問わず広く対応しているので、
「自分のケースは相談できるのだろうか」
と迷われている方も遠慮なくお問い合わせください。

盗撮・痴漢・覗き・つきまとい(迷惑防止条例違反)

犯行態様

「女性のスカート内を盗撮した」
「女装して女風呂に立ち入った」
「好みの外見の女性の後をつけた」
「電車内で女性の尻を触った」

といった行為に及んだ場合、各都道府県の「迷惑防止条例違反」として刑罰を受けることがあります。

迷惑防止条例には様々な迷惑行為が処罰対象として掲げられており、それらに該当する行為に及んで被害申告がなされると捜査の対象となります。

迷惑防止条例違反の特徴

迷惑防止条例違反として規定されているのは、基本的に比較的軽微な犯行態様のものです。
なぜなら、重要・重大な犯罪行為については刑法その他の法律で規定がされており、迷惑防止条例は各都道府県が
「法律違反ではないけれども野放しにするのはちょっと……」
と考えた行為を処罰の対象としているからです。

したがって、例えばわいせつ行為であれば普通は「不同意わいせつ」という刑法上の罪で処断されます。
しかし、
「微妙に不同意わいせつの要件を満たさない」
といったケースで補助的に迷惑防止条例違反が使われたり、
「警察や検察が『不同意わいせつの要件は満たすけれど軽い処分にしてやりたい』と考えている」
といったケースで罪名落としとして迷惑防止条例違反に罪名が変更されることがあります。

示談の重要性

迷惑防止条例違反は比較的軽微な態様のものということもあり、示談成立率は性的姿態等撮影や不同意わいせつと比べると高めに出ています。

刑罰は罰金刑を中心とした軽めのものが設定されているので、示談不成立の場合は検察官が略式起訴を選択する可能性が高くなります

したがって、迷惑防止条例違反で不起訴を目指すのであれば被害者との示談がかなり重要となります。

刑罰・条文

【刑罰】

(盗撮)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
(痴漢)6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
(常習痴漢)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
(覗き)6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
(常習覗き)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
(つきまとい)1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例
https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00001067.html

淫行・児童買春(青少年保護育成条例違反)

犯行態様

青少年(18歳未満の者)と淫らな性行為、わいせつな行為に及んだ場合、各都道府県の「青少年保護育成条例違反」として刑罰を受けることがあります。

青少年保護育成条例には様々な禁止行為が指定されていますが、刑事事件の示談交渉が問題となってくるのは俗に淫行とか児童買春とか呼ばれる行為で、それらに該当する行為に及んで被害申告がなされると捜査の対象となります。

青少年保護育成条例違反の特徴

青少年保護育成条例違反の該当行為として規定されているのは、青少年への有害図書や有害玩具の提供、青少年の下着の買取、青少年を特定の労務に就かせること、そして青少年(18歳未満の者)に対する淫らな性行為やわいせつな行為(淫行・児童買春)です。

子どもに対する性行為、わいせつな行為を処罰する法律としては刑法の
・不同意性交等
・不同意わいせつ

・児童ポルノ禁止法
があります。

ただ、不同意性交等や不同意わいせつで被害者の同意の有無が問題とならなくなる年齢は「16歳未満」とされており、被害者が13歳以上16歳未満の場合は「加害者が被害者の生まれた日より5年以上前の日に生まれた者であること」となっています。
つまり、被害者が「16歳または17歳」である場合には、「同意しない意思」の要件を満たさない限り、不同意性交等や不同意わいせつは成立しない、ということです。

そのため、被害者が16歳または17歳であるケースにおいては、不同意性交等や不同意わいせつではなく、青少年保護育成条例違反として立件される可能性が高くなります。

示談の重要性

青少年保護育成条例違反(淫行)は、不同意わいせつや不同意性交等と比べると刑罰が軽く設定されています。
罪の性質上、被害者の年齢は18歳未満(16歳か17歳)で固定されており、被害届を出すか否か、示談をどうするかの判断はほぼ確実に親に委ねられています。
そのため、交渉拒否率はやや高めに出ています。

不同意性交等や不同意わいせつと異なり、青少年保護育成条例違反には罰金刑が設定されているため、示談が成立すれば不起訴の可能性が高く、示談が成立しなければ略式起訴の可能性が高くなります

したがって、青少年保護育成条例違反で不起訴を目指すのであれば被害者との示談がかなり重要となります。

刑罰・条文

【刑罰】

2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

大阪府青少年健全育成条例
https://www.pref.osaka.lg.jp/houbun/reiki/reiki_honbun/k201RG00000487.html

児童買春(児童ポルノ禁止法違反)

犯行態様

児童(18歳に満たない者)と買春(対価を支払い、または対価を支払う約束をして、性交や性交類似行為をする、児童の性器、肛門、乳首を触る、児童に自己の性器等を触らせる)に及んだ場合や、児童ポルノ(児童の性交等、児童の性器を触るまたは児童に性器を触らせる姿態、衣服を着用せず児童の性的な部位が露出・強調されたものの写真や電磁記録)の提供をさせた場合、「児童ポルノ禁止法違反」として刑罰を受けることがあります。

典型的なのは、
・児童に金を渡してセックスする
・児童に卑わいな自撮りを送信させる
といったもので、これらの行為に及んで被害申告がなされると捜査の対象となります。

児童ポルノ禁止法違反の特徴

児童買春について、青少年保護育成条例違反と同様にほとんどのケースは
・不同意性交等
・不同意わいせつ
として処理されます。

ただ、不同意性交等や不同意わいせつには年齢の縛りがあるので、これらに該当しない年齢の児童(青少年)の事案が児童ポルノ禁止法違反や青少年保護育成条例違反となっています。

ざっくり言うと以下のような感じです。

被害者が16歳未満
⇒不同意性交等、不同意わいせつ

被害者が16歳か17歳で金銭授受なし
⇒青少年保護育成条例違反

被害者が16歳か17歳で金銭授受あり
⇒児童ポルノ禁止法違反

 

児童ポルノの提供について、児童ポルノ禁止法以外にこの行為を処罰する法律はありません。
したがって、SNSや出会いアプリ等で知り合った18歳未満の児童に裸体その他卑わいな自撮り等を送信させていると児童ポルノ禁止法違反となります。

示談の重要性

児童ポルノ禁止法違反(児童買春)は、不同意わいせつや不同意性交等と比べると刑罰が軽い設定となっていますが、青少年保護育成条例違反(淫行)と比べると重い設定となっています。
罪の性質上、被害者の年齢は18歳未満(16歳か17歳)で固定されており、被害届を出すか否か、示談をどうするかの判断はほぼ確実に親に委ねられています。
そのため、交渉拒否率はやや高めに出ています。

不同意性交等や不同意わいせつと異なり、児童ポルノ禁止法違反(児童買春)には罰金刑が設定されているため、示談が成立すれば不起訴の可能性が高く、示談が成立しなければ略式起訴の可能性が高くなります

 

児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ提供)は、性的姿態等撮影と同等の刑罰が設定されています。

この態様の事案は非常にレアなので士道法律事務所での過去事例もかなり限られていますが、示談が成立せず公判請求となった事案が存在しています。

したがって、児童ポルノ禁止法違反は児童買春であれ、児童ポルノ提供であれ、不起訴を目指すのであれば被害者との示談がかなり重要となります。

刑罰・条文

【刑罰】

(児童買春)5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
(児童ポルノ提供)3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金

児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0100000052/

公然わいせつ

犯行態様

「路上で通行人に自身の陰部を見せつけた」
「ビル階段の踊り場で自慰行為をした」
といった行為に及んだ場合、「公然わいせつ」として刑罰を受けることがあります。

公共の場でなされた露出行為や性行為等の目撃者がいて、目撃者がこれを警察に通報した場合に捜査の対象となります。

公然わいせつの特徴

公然わいせつの最大の特徴は、
「保護法益(刑法等の各条文が規定により守ろうとしている利益)は『社会の健全な性秩序、善良な性風俗』である」
という点です。
同じ性犯罪系の罪でも盗撮(性的姿態等撮影)や不同意わいせつの保護法益が「被害者の性的自由・性的自己決定権」であることと明確に異なっています。

つまり、厳密に言えば公然わいせつは被害者が存在しない犯罪であり、敢えて被害者を想定するなら「社会そのものが被害者」ということになります。

示談の重要性

「被害者が存在しない」
「社会そのものが被害者である」
これを馬鹿正直に捉えてしまうと、示談などできない、やりようがないという考えに至ってしまいます。

しかし、同じように「社会の●●」が保護法益とされている罪、例えば
・覚せい剤取締法違反
・通貨偽造
・文書偽造
といった犯罪と公然わいせつとでは異なる点があります。
それは
「公然わいせつでは基本的に『目撃者』が存在する」
という点です。

見たくもないものを見せられて嫌な思いや不安を抱いたりしてわざわざ通報までした『目撃者』がいる。
だからこの『目撃者』を被害者と見立てて謝罪や償いをする。
『目撃者』が示談を受け入れたら嫌な気持ちは慰謝されるし、加害者への経済的ダメージにもなる。
だから不起訴になりやすくなる。

こういうロジックです。

公然わいせつの法定刑はかなり低めの設定です。
それは被害の程度が小さいからなのですが、軽微な犯罪であるがゆえに目撃者が
「いや、別に自分に直接何かされたわけじゃないんで……」
と示談交渉自体を面倒くさがって連絡先開示を拒むこともあります。

こうした場合に他に何も手を打たなければ略式起訴が選択される危険が出てきます。

したがって、公然わいせつで不起訴を目指すのであれば被害者との示談はそれなりに重要、もし示談ができなかったら次善の手を講じるのが重要となります。

刑罰・条文

【刑罰】

六月以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

横領

犯行態様

「勤務先の金を自分の口座に送金した」
「不正な会計処理を行って出張費を受け取った」
「弁護士が預り金を私的に流用した」

といった行為に及んだ場合、「横領」として刑罰を受けることがあります。

金品の不正な領得が発覚して被害者がこれを警察に通報した場合に捜査の対象となります。

横領の特徴

横領・窃盗・背任の区別

「横領」「窃盗」「背任」は犯行態様がよく似ており区別がやや困難です。

横領=自己の「占有」する他人の「物」を領得
窃盗=他人の「財物」「窃取」
背任「事務処理」をする者が「任務に違背」

横領が成立するには「占有」が必要なので、
「バイトがレジの現金を少しずつ抜いていた」
「バー店員が店の高級酒を持ち帰っていた」
といったケースは占有が肯定されず「窃盗」となります。

また、横領は「他人の『物』」に対してしか成立しないので、
「取引先からキックバックを受け取っていた」
といったケースは被害者(勤務先)からの「物」の領得がないので「背任」となります。

ほとんど示談はできない

刑事示談交渉を取り扱う法律事務所として、横領という罪に関して最も問題視しているのが
「ほぼ示談ができない(=まともに示談できる事案に滅多に遭遇しない)」
という点です。

横領(横領類似の窃盗含む)事件を起こした人が、法律相談を希望して法律事務所に電話をかけてきて、その中の90%以上の人が口にするのが、
「お金ないです。でも示談で不起訴にしてほしいです」
という言葉。

示談というのは、
「被害者に謝罪し、被害額+αの金額を支払って赦しを得る手続」
です。

被害者に大損害、大迷惑をかけて自分だけさんざんいい思いをしておいて、
「横領した金は全部使い切って残ってないです。なので超長期分割で勘弁してください」
こんなことを言ってくる横領犯を被害者が許すわけがありません。

士道法律事務所の過去事例でも横領で示談が成立したのは、
・比較的初期で被害額が小さいうちにバレた
・経済的に太い親戚が助け舟を出してくれた
・横領した金を投資に回して利益が出ていた
このような特殊なケースに限られています。

自認額と被害額が食い違う

横領をする人は金銭管理がとにかくルーズです。
自身の金銭管理ができていないから経済的に行き詰まり、他人(会社)の金という線引きがいい加減だから安易に自分の懐に入れ、盗った金もぞんざいに扱い博打や遊興に注ぎ込みます。

ルーズさ自体は個々人の性格や特性なので別によいですが、横領の示談交渉で問題となるのは
「いくら横領したのか、横領した金をいつ何にどう使ったかを全く把握できていない」
という点です。

長期間にわたる横領を見過ごすということは、被害者も金銭管理が適当ということを意味します。

十分な金銭管理ができていない者同士が加害者・被害者となった場合に何が起こるかというと。
「被害者が計上してきた被害額と、加害者の認識している被害額が全く食い違う」
という事態です。

加害者は、いついくらを盗ったかということをいちいち記憶・記録などしていません(レジの現金窃取の事案で、盗った現金を都度銀行口座に入金していたので窃盗金額がハッキリわかった、というレアケースも存在はしますが)。
一方で被害者の管理も杜撰なので、横領発覚後に帳簿の突合せを始めると日々の会計ミスや他のバイトや社員がこっそり抜いていた分もまとめて「被害額」として出てくることになります。

刑事事件化するのは立証が明確な被害部分についてとなります。
しかし、被害者は「過去全部の被害額(らしき金額)を全部払え」と言ってくる
加害者は「自分が盗ったのはこのくらいの(大雑把な)金額だと思う」と言う
食い違いが激しいのでなおのこと示談は成立し難くなる、という構図になっています。

示談の重要性

横領は示談交渉を主戦場とする弁護士からすると如何ともし難い犯罪ではあるのですが。

実は横領には
「刑事事件化しにくい」
という傾向があります。

横領被害が発覚した場合、
「とりあえず警察に通報する」
という行動に出る被害者はほぼ皆無です。

横領被害を認知した被害者は、ほぼ確実に被害額の回収を第一に検討します。
下手に刑事事件化させてしまうと回収可能性が大幅に低下するからです。

だから、まずは加害者に対して直接
「盗った金を返せ! 返さないと通報する!」
と詰めます(実際には通報しない)。

次に、会社規模や被害の程度によっては被害者側で弁護士を用意して調査させつつ弁護士から請求させます。
ここで示談がまとまればひとまず終了です。

まとまらなければ民事の訴訟を提起してきます。
民事訴訟の中では十中八九「和解の勧試」がなされて、大半はここで和解(示談)となります。

ここまで行っても回収が見込めない、あるいは和解(示談)の約束が守られなかった場合。
この段階でやっと刑事事件化が検討されます

このような傾向が明確に見て取れるので、示談のチャンスは複数存在しており、(お金を用意することさえできれば)チャンスを生かして刑事事件化は回避できるということで、示談が重要となってきます。

刑罰・条文

【刑罰】

(横領)5年以下の拘禁刑
(業務上横領)10年以下の拘禁刑

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

背任

犯行態様

「取引先からキックバックを受け取った」
といった行為に及んだ場合、「背任」として刑罰を受けることがあります。

会社役員等の一定のポジションにある人が取引先からキックバックや接待を受けることでその取引先を優遇して契約を取り付けていて、その事実が勤務先に発覚して勤務先がこれを警察に通報した場合に捜査の対象となります。

横領の特徴

横領・背任の区別

「横領」の項目でも触れたように、「横領」「背任」は犯行態様がよく似ています。

横領=自己の「占有」する他人の「物」を領得
背任「事務処理」をする者が「任務に違背」

横領の方は「何らかの委託関係に起因して他人の物を占有している状態」、背任の方は「他人のために事務を処理する状態」が必要となってくるので、いずれも何らかの契約に基づいて一定のポジション(地位・立場)を与えられていることがほぼ不可避となります。
実務上で問題となりやすいケースについて言えば、

「他人の物を占有する立場を利用して現金や物を領得したら『横領』」
「地位を利用して横領以外の方法で勤務先に損害を与えたら『背任』」

ざっくりこんな程度の認識で区別がつけられます。

ほとんど示談できない

背任はほとんど示談ができない罪名です。
理由は横領とほぼ同じです。

背任は一定の地位が要求されることや犯行態様が特殊なので、横領や横領類似の窃盗に比べると問い合わせの件数は少なめに出ています。
ただ、問合せや法律相談のときに加害者が述べることはほぼ変わりなく、
「背任で会社から詰められています。示談したいです。でもお金はありません」
です。

また、加害者の申告被害額と被害者の自認額が大きく食い違うという点も共通しています。

これらの理由から示談はまず期待できません。

示談の重要性

「刑事事件化しにくい」
「交渉⇒民事訴訟⇒和解、の流れを辿る」

という点も横領と共通です。
示談のチャンス自体は複数存在しているので、(お金を用意することさえできれば)チャンスを生かして刑事事件化は回避可能となり、示談は重要となってきます。

刑罰・条文

【刑罰】

5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

詐欺

犯行態様

「架空の投資話で金銭を騙し取った」
「勤務先から水増しした残業代を受け取った」
「交通事故で保険会社に虚偽の請求をかけた」

といった行為に及んだ場合、「詐欺」として刑罰を受けることがあります。

詐欺は真実でないことを真実であるかのように装って他人を騙し、騙された人が勘違いに基づいて財物を移転させた場合に成立します。
被害者が騙されていたことに気付いて警察に被害届を出すと捜査の対象となります。

詐欺の特徴

滅多に刑事事件化しない

詐欺は刑事事件として立件されることがそう多くありません。

詐欺の条文自体は
「人を欺いて財物を交付させた」
と非常にシンプルな体裁ですが、
「普通の取引との区別が容易でない」
「詐欺の故意の立証が極めて困難」
という特性があるからです。

詐欺は「知能犯」に分類されており、寸借詐欺や末端使い捨ての特殊詐欺(オレオレ詐欺)といった単純な形態を除くと、基本的には騙すための手口やその後の刑事事件化回避の策がかなり綿密に練られています。
性犯罪や粗暴犯、単純な窃盗と比べて手口の分析や検討に相当な時間と手間がかかるということなので警察も対応を嫌がります。
結果、被害届の提出自体がなかなか実現できないという事態が発生します。

加害者が示談を考えない

詐欺は事件数の多さに比して、示談交渉希望として士道法律事務所に問い合わせが寄せられる件数が劇的に少ない罪名です。

受任に至った過去事例も、
「年齢を偽って本来より安く観戦チケットを買った」
「勤務先の塾で講義延長を5分程度水増ししていた」
「返す気がないのに少額の寸借詐欺を繰り返した」

といった内容の比較的軽微なケースばかりです。

なお、最近では
「銀行口座を売ったら特殊詐欺に使われた」
「特殊詐欺で受け子、運搬係を担当した」
といった特殊詐欺絡みの問い合わせが目立ちますが、示談希望で問い合わせをしてこられるのは末端の使い捨て要員なので示談するためのお金もないとか、共犯の関係で示談の成立可能性がほぼないとかで、法律相談自体をお断りするケースが多くなっています。

こういったケースは除くとして、なぜ詐欺の加害者は示談を考えないか
そもそも問い合わせ自体が少ないので限られた機会からの推測とはなりますが。

「詐欺の加害者は被害者や捜査機関を言いくるめられると考えているから」

このように推測されます。
忖度せずに言うなら、詐欺は頭のいい人間が頭の悪い人間を騙す犯罪です。
騙す方はこれを当然に自覚しているので、自らの非を認めて被害者に謝罪と償いをして赦しを請おうという発想になりにくい。
だから示談を検討しないのであろうと見ています。

示談の重要性

前述のとおり、詐欺は加害者側の事情により示談が滅多に検討されません。

勤務先での取引に関する詐欺は規模が大きくなりすぎるので、横領や背任と同じ理由で示談が成立しないケースの方が多くなります。

時折持ち込まれる少額の詐欺事案は被害の程度がささやか過ぎて、被害者に示談の話を持ち掛けても
「いや、そのお気持ちだけで結構なので。今後は正規の料金でまたご利用ください」
と丁寧に謝絶されることがほとんどで、それで刑事事件化もしません。

こういった実態から、詐欺については(相談、受任として実際に士道法律事務所に持ち込まれるケースに関しては)示談の重要性は他の罪名と比べて低いということになっています。

刑罰・条文

【刑罰】

10年以下の拘禁刑

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

脅迫

犯行態様

「元交際相手に裸の写真をばら撒くと告げた」
「取引相手と揉めて『殺す』とメールした」」
「SNSで殺害予告のDMを送った」

といった行為に及んだ場合、「脅迫」として刑罰を受けることがあります。

生命、身体、自由、名誉または財産に対して危害を加える旨を告知して脅迫すると「脅迫」が成立します。
脅された被害者が警察に被害の申告を行うと捜査の対象となります。

脅迫の特徴

脅迫は、基本的にはある程度交流のある人間関係の中で発生する犯罪です。
典型例は
「交際相手と別れそうなときに『別れるなら裸の写真(ハメ撮り動画)をばら撒く』と言って繋ぎとめようとする」
というパターン。

これ以外だと
「ご近所トラブルに端を発する応酬でビラをばら撒く」
というものもあったりします。

脅迫の法定刑は「2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」、かなり軽めの設定です。
脅すだけなら怖がらせる以上の実害はないから、というのがこの軽い刑罰が設定されている理由なのですが。
示談交渉の観点から切り込むと、
「ある程度交流のある人間関係の中で発生」
というポイントに特定の意味が生じてきます。

端的に言えば
「過去の加害者と被害者との間の出来事と、今後のことについてあれこれ話が飛躍していって最終的に示談金(解決金)が被害の程度に比して高額になりがち」
という現象に繋がることとなります。

なお、事件前の人間関係が希薄なパターン(典型例はSNS上での煽り)については、過去のいざこざについての話に展開することはほぼない反面、示談交渉自体が断られやすくなります。

示談の重要性

脅迫は刑罰の設定が軽めの犯罪です。

ただし、交際関係その他従前からの加害者と被害者の人間関係が存在している可能性が高く、示談交渉においてもその点がポイントとなってきます。
示談不成立となった場合は高確率で略式起訴が選択されるので、略式起訴も含めて前科回避を目指したいという場合は示談がかなり重要となってきます。

刑罰・条文

【刑罰】

2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

未成年者誘拐

犯行態様

「ネットで知り合った未成年とドライブした」
「家出少女を一人暮らしの自宅に招き入れた」

といった行為に及んだ場合、「未成年者誘拐」として刑罰を受けることがあります。

未成年者に甘言を囁いてどこかに連れ出すと「未成年者誘拐」が成立し、被害者(ほとんどは誘い出された未成年者の保護者)が警察に通報すると捜査の対象となります。

未成年者誘拐の特徴

略取は滅多に見られない

未成年者誘拐に関する条文は刑法224条で、
「未成年者を略取し、又は誘拐した者は」
という体裁になっています。

「略取」「誘拐」の二つの類型があり、

略取:暴行や脅しといった暴力的な手段での連れ去り
誘拐:虚偽や誘惑で自発的な同行を促す連れ去り

と使い分けられます。
現代日本では路上で未成年者をワゴン車に引きずり込んで連れ去るような態様の犯行は滅多に見受けられず、ほとんどが
「成人男子がアプリやSNSで接点を持った女子中高生を遊びに誘ったり付き合ったりして外に連れ出し、娘が帰宅しないことから家族が警察に行方不明者届を出した」
といったパターンです。

未成年者誘拐の立件は稀

出会いアプリやSNSといったネットで知り合った女子高生をデートに誘いだしたというケースは、その後に不同意わいせつや不同意性交等(16歳未満)に発展していくのが通常です。
この場合は不同意わいせつや不同意性交等で立件されますが、そこに至る過程での未成年者誘拐は実質無視されます。

そのため未成年者誘拐として立件されるのは、
・家出少女を自宅に泊めたが性的接触なしで本当に泊めただけ
・不同意性交等の発覚前に家族から行方不明者届が出た
といった極めてレアなケースに限定されます。

示談の重要性

士道法律事務所に未成年者誘拐の事案が持ち込まれたことは複数ありますが、件数自体は他の罪名と比べると圧倒的に少なく、かなりレアな罪名です。

前述の
・家出少女を自宅に泊めたが性的接触なしで本当に泊めただけ
というパターンは示談せずとも不起訴を獲得することが可能ですが、
・不同意性交等の発覚前に家族から行方不明者届が出た
というパターンだと本命として後から登場してくる不同意性交等の示談の成否で起訴・不起訴は大きく左右されるということになってきます。

したがって、犯行態様によるものの、未成年者誘拐単体では示談はそこまで重要ではない、と言うことになりそうです。

刑罰・条文

【刑罰】

3月以上7年以下の拘禁刑

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

住居侵入

犯行態様

「盗撮のために店舗や個人宅敷地に立ち入った」
「ナンパ中にマンション内にまでついていった」
「宿泊していないホテルのラウンジを利用した」

といった行為に及んだ場合、「住居侵入(建造物侵入)」として刑罰を受けることがあります。

正当な理由がないのに他人の住居や建造物に立ち入ると「住居侵入(建造物侵入)」が成立し、被害者から被害届が出ると捜査の対象となります。

住居侵入の特徴

牽連犯として発生

住居侵入は単体で成立して立件されることは極めて稀で、
「目的である別の犯罪を実行するための手段として発生」
するケースがほとんどです。

このように目的と手段の関係にある罪は「牽連犯(けんれんはん)」と呼ばれ、
・窃盗(目的)をするために店舗に侵入(手段)
・盗撮(目的)をするために隣家に立入(手段)
といったパターンが典型例です。

したがって、目的となる犯罪の被害者と手段である住居侵入(建造物侵入)の被害者は異なっていることが多く、示談交渉の場面において住居侵入(建造物侵入)の被害者からは、
「(メインの目的となる罪の)被害者が示談するなら自分も示談でいい」
と言われることがよくあります。

侵入先で罪名が変化

刑法130条の見出しは「住居侵入『等』」となっており、侵入した対象がどういうものであったかによって罪名が微妙に変化します。

・現在居住に使われている家 ⇒ 住居侵入
・現在使われていない別荘等 ⇒ 邸宅侵入
・店舗や庭やエントランス ⇒ 建造物侵入
・観光船や漁船その他の船舶 ⇒ 艦船侵入

ちなみに、立ち入った先がどこであろうと呼称としての罪名が変わるだけで刑罰に違いはありません。

立入には家主の許可を得ていたけれども、その後居座って退去の求めに応じなかった場合は「不退去」という罪が成立します。
強引な不動産訪問販売や貴金属の押し売り(押し買い)といったケースで登場することがある罪名です。

示談の重要性

住居侵入は刑罰の設定が軽めの犯罪で、特に罰金刑については「10万円以下」という最軽量の規定となっています。

構造的にもメインとなる目的の犯罪の「手段」として、「ついで」で立件されるような扱いが多くなっています。

しかし、目的となるメインの罪で示談ができなかったとか、事件前からの加害者と被害者のトラブルから示談が拒否されたとかのケースは略式起訴で終結していることが多く、略式起訴も含めて前科回避を目指したいという場合は示談がかなり重要となってきます。

刑罰・条文

【刑罰】

3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

名誉毀損

名誉毀損

犯行態様

「元交際相手の名前で出会いアプリに登録した」
「暴露動画を作成してYouTubeにアップした」」
といった行為に及んだ場合、「名誉毀損」として刑罰を受けることがあります。

他人の名誉を損なうような事実を公に示した場合に「名誉毀損」が成立し、被害者からの「告訴」がなされることで捜査の対象となります。

名誉毀損の特徴

侮辱との区別

「名誉毀損」とよく似た罪として「侮辱」があります。

両者の区別は「事実(≠真実)」の摘示があるか否か
「事実」を示していれば「名誉毀損」、示していなければ「侮辱」となります。

ここでの「事実」というのは、
人の社会的評価を低下させるような具体的な出来事や情報
です。
「真実」であることは求められていないので、適示した「事実」が本当であるか虚偽であるかは問われません

事実を摘示しない侮辱というのは
抽象的な悪口や価値判断
を指します。

したがって、

「あいつには盗撮の前科がある」
「あいつは大学を退学になった」
「あの子は男とヤリまくってる」

であれば事実の摘示があるので「名誉毀損」となるし、

「あいつは根っからのクズだ」
「あいつは常識外れのバカだ」
「あの子はセックス依存症だ」

であれば事実の摘示がなく単なる評価なので「侮辱」となる、ということです。

告訴取消が重要

名誉毀損は公訴提起に被害者の「告訴(処罰意志を含めた被害申告)」が必要となる「親告罪」の一つです。

器物損壊同様に告訴が存在していることが刑事裁判を提起することの必須条件となっているので、告訴がない、取り消されたといった場合には有罪に持っていくこと自体が不可能となります。

そのため、名誉毀損においては告訴の有無存否が極めて重要となってきます。

示談の重要性

前述のとおり、「名誉毀損」親告罪なので有効な告訴が存在していないと公判請求(刑事裁判)を選択することができません。

そのため、
「示談できちんと告訴の取消や、略式起訴も含めて前科回避を目指したいという場合は示談がかなり重要となってきます。

刑罰・条文

【刑罰】

3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

刑法
https://laws.e-gov.go.jp/law/140AC0000000045

密漁(漁業法違反)

犯行態様

「海に遊びに行ってサザエを採集した」
といった行為に及んだ場合、「漁業法違反(密漁)」として刑罰を受けることがあります。

許可なく特定の海産物を捕獲・採集した場合に「漁業法違反(密漁)」が成立して捜査の対象となります。

漁業法違反の特徴

一部海産物の採集が対象

海の生き物であれば何を獲っても漁業法違反になるというわけではなく、処罰の対象となる海産物は限定されています。
具体的には以下のようなものです。

・アワビ
・ナマコ
・シラスウナギ
・アサリやサザエなどの貝類
・ワカメや昆布などの海藻類
・イセエビやタコなどの定着性水産動物

士道法律事務所に相談が持ち込まれる事例として最も出現頻度が高いのは、
「友人や家族と海に遊びに行った際に岩場で『サザエ』を見つけてクーラーボックスに入れていたら巡回中の海上保安官に声をかけられた」
というケースです。

比較的広範囲の海で見つかる。
貝なので捕獲が極めて容易。
形状が特徴的でわかりやすい。
美味しいのでテンションが上がる。
採取禁止のイメージがあまりない。

こういった理由によるものと推察されます。
海に行ったときは「サザエは店で買うもの。絶対に捕獲しない」と肝に銘じておいてください。

管轄は海上保安庁

一般的な犯罪の場合、その事件を管轄するのは基本的に通報や被害申告を受けた警察署です。
これに対して海上の事件である漁業法違反の場合は海上保安署が事件を管轄することとなります。

ただ、実務上は管轄するのが警察署であろうが海上保安署であろうが大差はありません。
取調べが行われるのが警察署ではなく海上保安署になるだけで、捜査が終わればその地域を管轄する検察庁に送られるのも共通しています。

細かな差異としては、
・基本的に旅先での犯行となるので取調べの際に遠方の海上保安署まで出向いていかねばならない手間がある
・警察と比べて事件数自体が圧倒的に少ないので海上保安官が取調べや示談交渉の打診にあまり慣れていない
こういったところが挙げられます。

基本的に示談できない

漁業法違反(密漁)の事案はまず示談はできないと思っておいてください。

漁業法違反(密漁)で示談交渉を持ちかけるべき相手方は
その海域の漁業権を有する漁業協同組合(漁協)
となります。

密漁は夏場を中心に一定件数定期的に発生するので、示談希望の打診があったとしても漁協の方からすると
「またか。面倒くさい」
となりがちです。
したがって、一律で交渉自体拒否という対応を取る漁協が多いです。

また、漁協は複数の漁師によって構成される集団です。
いざ示談を取り付けるとなった場合には組合長その他の責任者の同意が必要となります。
そのため、交渉窓口となった組合員が同情的で示談に前向きであったとしても
「組合長に話したら反対された」
とひっくり返されるケースも発生します。

密漁(漁業法違反)は示談が極めて難しく、獲った海産物をすぐ放流していたとしても、後に贖罪寄付をしたとしてもプラスの効果はさほど大きくならず、ほとんどが略式起訴となります。

ただ、特定の条件を満たしていれば示談不成立でも不起訴にできることがあり、士道法律事務所の過去事例でもそういったケースが僅かながら存在しています。

示談の重要性

前述のとおり、密漁(漁業法違反)は普通はまず示談ができない罪名です。

この点を重く見れば、交渉を試みても基本的には無駄ということになるので、示談交渉に取り組む意味合いは低めとなります。

ただ、漁協の担当者その他がたまたまいい人だった等の良い巡り合わせがあれば示談ができることもあり、その場合には示談の存在が不起訴に向けた大きなプラス材料となることが予想されるため、そういう意味では(糸口が掴めるのであれば)示談が重要となってきます。

刑罰・条文

【刑罰】

(特定水産動植物)3年以下の拘禁刑または3000万円以下の罰金
(共同漁業権の侵害)100万円以下の罰金

漁業法
https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000267

弁護士 飯島 充士 Iijima Atsushi

執筆者

士道法律事務所 Shidoh Law Office

弁護士飯島 充士 Iijima Atsushi

プロフィール

  • 生年月日:1979年1月
  • 特技:空手(和道流初段)
  • 趣味:ドライブ、ショッピング、漫画・アニメ
  • 座右の銘:「人間万事塞翁が馬」

経歴

  • 名古屋大学、南山法科大学院を卒業
  • 2009年9月 司法試験合格
  • 岐阜において司法修習(新63期)
  • 弁護士法人大江橋法律事務所に入所
  • 2012年7月 士道法律事務所を設立
  • 2026年3月 弁護士法人 士道を設立
  • 2026年8月 名古屋支部を設立

所属

  • 大阪弁護士会

大阪本部 06-6365-7650

名古屋 052-526-6609

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