国選弁護人・私選弁護人・当番弁護士
刑事事件を担当する弁護士は「弁護人」と呼ばれます。
弁護人には
の二種類があります。
国選弁護人というのは、お金がなくて弁護士費用を用意できない人でも弁護士の弁護による刑事裁判を受けられるようにするために、国がつける弁護人、国が選ぶ弁護人のことです。
私選弁護人というのは、それなりにお金を持っている人が刑事裁判の弁護をしてもらうために、弁護士を被告人自身やその家族、知人等がつける弁護人、私的に選ぶ弁護人のことです。
これらに対して当番弁護士というのは、
「逮捕・勾留された被疑者の要請があったときに、そのエリアを管轄する弁護士会が、その日の担当として名簿に登録されている弁護士をその被疑者の下に派遣して、初回の1回に限り無料でアドバイスを行わせる制度、またはその制度に登録して派遣された弁護士」
のことです。
国選弁護人の選任が可能となるのは勾留決定後または起訴後なので、
「逮捕されたときから勾留決定が出るまで」
の最大72時間は国選弁護人をつけることができない時間帯が生じます。
この空白を埋めるために考案されたのが「当番弁護士」という制度で、その後勾留決定がなされたらここで派遣された弁護士が多くの場合はそのまま国選弁護人となります。
国選弁護人か私選弁護人か
大まかに国選弁護人と私選弁護人の特徴、違い、メリット・デメリットをまとめると以下のようになります。
【国選弁護人】
| 選択の可否 |
どの弁護士にするかは一切選べない |
| 刑事弁護の能力 |
ほぼ初心者の新人からベテランまで幅広い |
| 弁護士費用 |
安い、被疑者負担が0円となることも |
| やる気 |
弁護士によるが全体的には低め |
【私選弁護人】
| 選択の可否 |
どの弁護士にするかは完全に自由 |
| 刑事弁護の能力 |
基本的にハイレベル(ただし刑事事件専門の事務所に限る) |
| 弁護士費用 |
高い、事務所によるが数十万円程度~ |
| やる気 |
全体的に高い |
【選択の可否】
国選弁護人は国が選任する弁護人です。
被疑者・被告人の側で国選弁護人をえり好みすることは一切できません。
一方、私選弁護人は被疑者・被告人が私的に選ぶ弁護人です。
私的に選ぶのですから複数の法律事務所・弁護士を比較検討しても全く構いませんし、能力や料金、印象等からどこのどういう弁護士を私選弁護人に選任するかは完全に自由です。
【刑事弁護の能力】
弁護士登録したての弁護士はほぼ義務的に当番弁護士・国選弁護人の名簿に名前を登録させられます。
つまり、国選弁護人には刑事弁護の実務を経験したことがない、経験が非常に浅い初心者弁護士が結構な割合で含まれているということです。
もちろん、刑事弁護が好きで名簿への登録を続けているという奇特なベテラン弁護士も一定数存在しますが、その割合は推して知るべしといったところでしょう。
一方、私選で刑事弁護を受ける弁護士は基本的に刑事事件の取扱い経験の豊富さを売りにして相応の費用で仕事を請け負っており、私選弁護人の刑事弁護の能力は必然的に高いものとなっています。
ただし、刑事事件を常態として受任している弁護士の数は決して多くはありません。
普段は民事系の仕事がメインで刑事事件は一応取り扱いとして挙げているだけ、といった弁護士だと民事はともかく刑事の能力はそこまで高くないということがあるので注意が必要です。
【弁護士費用】
国選弁護人の弁護士費用は基本的に国が負担し、判決で被告人が弁護士費用を負担することとされた場合にのみ被告人が負担することとなります。
そして国選弁護人の弁護士費用は極めて低い額に設定されています。
被疑者段階で10万円程度、被告人段階で10~20万円程度。
どれだけ弁護活動に時間と労力を割いたかは一切考慮されず、示談成立や不起訴といった成果に対する報酬もほとんど発生しません。
接見で発生した交通費や裁判記録の謄写費用といった実費すら別途で支給されるわけではなく、国選弁護人の自腹となります。
一方、私選弁護人は接見や示談交渉といった弁護活動にかかった費用、示談の成立や不起訴処分の獲得といった良い結果を得たことの対価である報酬をきちんと徴収します。
つまり、優秀・有能な弁護士に依頼してきちんと仕事をしてもらい、前科の回避や刑罰の軽減といった結果を実現してもらえたら、その仕事や結果に応じた弁護士費用を弁護士に支払う必要が出てきます。
必然的に私選弁護人に支払う弁護士費用はそれなりに高額なものとなります。
【やる気】
前述のとおり、国選弁護人の報酬は極めて低い額に設定されています。
成果を挙げても報われることはなく、実費すら自己負担とされます。
そして、国選弁護人からの辞任も、被疑者・被告人からの解任も、原則不可です。
そのため、
「必要最低限の業務だけこなして早く事件を終わらせるのが合理的。真面目に取り組むほどに時間も労力もお金も取られて、普通にお金を払って事件を依頼してくれている他のお客さんの事件処理に迷惑がかかる」
と考えるのが自然な構造となっています。
この制度上の欠陥構造下においては、刑弁族と呼ばれるようなごく一部の例外的な弁護士を除けば、国選弁護人のやる気など出ようがない、ということになります。
一方、私選弁護人はそれなりの弁護士費用を払ってもらって事件処理を請け負っているわけですから、下手に手抜きなどすれば依頼者からクレームを付けられるし、下手をしたら解任されるというリスクがあります。
また、良い結果を出せばそれに応じた報酬金が得られるので、必然的に刑事弁護活動に向けたやる気、モチベーションは高く維持されることになります。
圧倒的に安いが、弁護士の能力・やる気は完全ランダムでギャンブル性の高い国選弁護人。
弁護士の能力・やる気は高めで選択も完全に自由だが、費用は一般的に高めの私選弁護人。
このような視点から何を重視するかで国選か私選かを選ぶのが良いと思われます。