今回も過去記事の見直しということで『弁護士費用特約(弁特)』を取り上げてみたいと思います。
弁特とは自動車の任意保険のオプション等でついているものです。
交通事故被害に遭って加害者との交渉を弁護士に任せようとなったときに弁特があれば基本的に300万円までの弁護士費用は保険会社が負担してくれます。
掛け金の負担額は月額300円前後でいざというときの費用対効果が極めて高いため、過去記事では弁特の加入をお勧めしていました。
それ自体は現在でも変わりません。
しかし弁護士業界では弁特関連のトラブルが散見されるようになってきています。
大雑把に言うと
「弁護士費用を払い渋る保険会社がある」
「対応の悪い保険会社がある」というケースが弁護士コミュニティで報告されています。
原因は
「弁特のコスパが良すぎてしょうもない事件でも弁護士に依頼するユーザーが増えて保険会社の経営を圧迫している」
「保険会社の弁特参入の門戸を広げ過ぎた」
というところであろうと推測されます。
これが一般ユーザーにどう影響するかというと
「弁特があるのに弁特で依頼を受けてくれる弁護士が見つからない」
という事態を招きます。
弁特があってもそれを使える弁護士が見つからなければ何の意味もありません。
掛け金の無駄です。
最近では交通事故に限らず日常のトラブルにも対応する弁特を商品として扱う保険会社も増えてきました。
あくまで個人的な見解ですがこのタイプの弁特はお勧めしません。
弁護士に要求される業務内容に比べて設定されている弁護士費用が低すぎて弁護士が受任を断る可能性が高いためです。
もっとも一般的な交通事故事件に限って言えば弁特が使える弁護士が見つからないという事態はまず発生しません。
交通事故はある程度定型的な事務処理が可能な業務で色んな法律事務所が交通事故事件を取り合っているからです。
自身の経験と周囲の評判に基づいて言うなら弁特でお勧めできるのは東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損保、この三社です。
自動車の任意保険を決めるときの考慮要素は色々あると思いますが、もし弁特も重視するのであればこういうところも意識しておいてもよいかもしれません。
(『蒼生 2022年4月号』掲載記事)