弁護士コラム

弁護士が解説する刑事事件の流れ(9)~控訴・上告~

2017.11.17

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(8)~判決~」で第一審の手続の説明が一通り完了しました。
今回は、判決に不服がある場合の上訴(控訴・上告)の手続についてです。

日本の裁判では三審制を採用しており、同じ事件につき3回まで裁判を受けられることになっています。
第一審判決の後に行う不服申立は「控訴」で、ここでの審理を「控訴審」と言います。
控訴審判決の後に行う不服申立は「上告」で、ここでの審理を「上告審」と言います。

第一審が地方裁判所であれば、控訴審は高等裁判所、上告審は最高裁判所になります。
第一審が簡易裁判所であれば、控訴審は地方裁判所、上告審は高等裁判所になります。

控訴ができる期間は、「判決言渡しの翌日から2週間以内」と決められています。
上告も同じです。
控訴や上告をするのかということについては、十分な余裕をもって弁護人としっかり協議をしましょう。

控訴をするには法定の「控訴理由」が必要です。
といっても、控訴理由の1つに「量刑不当(刑訴法381条)」があるので、どんなケースでも控訴自体はできると理解していて問題ありません。
要するに、公訴事実を全て認めている自白事件であっても、「言い渡された刑が重過ぎる」とすれば控訴理由は調うからです。

ところで、第一審の判断が控訴審で覆される(減刑されるを含む)可能性はどのくらいあるのでしょうか。

答えは、「そんなことは滅多にない」です。

控訴審の9割は審理が行われることすらなく、「控訴棄却(第一審の判決変更の必要なし)」で終わるというくらいのイメージです。

というのも、控訴審で判断を覆すには、基本的に「第一審で現れていなかった新事実」を証拠とともに示す必要があるからです。
第一審で全力を尽くしたはずなのに、そのときには出てこなかった事実・証拠で、かつ第一審の判断を覆すほどのもの……
普通に考えれば、そんなものはない、ということになります。
比較的可能性の高そうな事実を挙げるなら、第一審判決後に被害者と示談が成立したようなケースでしょうか。
もっとも、判決が出てから示談に本腰を入れてくるような被告人と示談をまとめたいと思う被害者がどの程度いるのかは疑問ですが。

上告をする場合には法定の「上告理由」が必要となります。
これは控訴理由より格段にハードルが上がり、次のようなものに限られます。

・憲法違反または憲法解釈に誤りがある
・最高裁(大審院等含む)判例に反する判断がなされた
・その他法令違反や量刑の著しい不当、重大な事実誤認があり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反する

どれもこれも通常はあり得ないものばかりです。
つまり、極めて例外的な特殊な事情がない限り上告はできないし、上告したところで門前払いされるということです。

このように、控訴にしても上告にしても、申立をすること自体はできますが、望む結果が得られることは極めて稀です。
逆転判決などというのは、それが滅多に起こらないことだからニュースになるのです。
控訴や上告で逆転の目もあるなどという考えは捨てて、第一審で納得いく結果が出るように全力を尽くしましょう。

次回は「再審」について説明します。