前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(3)~逮捕前の対処~」では逮捕の概要や逮捕前に取るべき対応について触れました。
今回は、「被疑者勾留」について解説します。
軽微な犯罪で罪を認めていれば、逮捕後すぐに釈放されることもあります。
しかし、そうでない場合には「勾留(被疑者勾留)」という次の身柄拘束処分に移行することになります。
勾留期間は原則として10日間。延長があれば最大20日間。
一部犯罪では最大25日間となることもありますが、これは国家転覆に関わるような極めて例外的な犯罪に限られるので、無視して結構です。
被疑者勾留の終了の仕方は大きく次の3つに分類されます。
1.起訴されて身分が「被疑者」から「被告人」に変わる
2.起訴されずに釈放される
3.身柄解放手続で釈放される
順に見ていきましょう。
勾留期間満了までに検察官が起訴した場合、刑事裁判を受けねばならなくなります。
起訴されることにより、「被疑者」という身分が「被告人」に変わります。
勾留処分については、ほとんどの場合で「被疑者勾留」が「被告人勾留」に変わります。
被告人勾留になると、基本的に刑事裁判終了まで身柄拘束処分が続くことになります。
被告人勾留に切り替わった後、留置場所が警察署から拘置所に変わることがあります。
これは、警察署や拘置所の混み具合にもより、必ず移送される、いつ移送されると決まっているわけではありません。
検察官が起訴せずに勾留期間満了を迎えた場合、身柄は解放されます。
「起訴されなかった=不起訴」と考える人が多いですが、「不起訴(起訴しない)」という処分はさほど多くなく、ほとんどは「起訴猶予(起訴するかどうかをもう少し検討する」というものです。
といっても、逮捕勾留までしておきながら、釈放後に改めて起訴するというケースは多くはないので、起訴されずに勾留満期を迎えれば、その事件は一応終結したのだと考えてよいでしょう。
ただし、後日捜査機関から呼出があったときは、必ず出頭に応じるようにしてください。
被疑者勾留は、ほとんどが上記のいずれかで終結します。
しかし、稀に身柄解放手続で釈放されて被疑者勾留が終結することがあります。
逮捕と異なり、勾留には次のような手続が用意されています。
勾留を決めた裁判に対する異議申立である準抗告または抗告。
勾留の理由または必要性がなくなった場合になされる勾留取消。
被疑者または被告人が病気になった場合等に認められる勾留の執行停止。
ただし、これらが認められることはほとんどありません。
司法統計と実際に異議申立を行った実感からの推測とはなりますが、異議申立をした方がいいと思われる事情がある事案で、異議申立をして、それが認められるのは数%以下といったところです。
極めて狭き門と言ってよいでしょう。
異議申立をすべき事情があるのであればもちろんこれを行うべきですが、現実的なところを考えると、起訴されて被告人勾留となった後の保釈手続の方を検討した方がよい、となります。
次回は「保釈」の手続について見ていきます。