弁護士コラム

弁護士が解説する刑事事件の流れ(3)~逮捕前の対処~

2016.11.24

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(2)~示談交渉~」では示談交渉の概要や示談金額について触れました。
今回は、「逮捕」「逮捕前に取るべき対処」について解説します。

逮捕には「通常逮捕」「緊急多穂」「現行犯逮捕」の3種類があります。

「通常逮捕」は、裁判官の発行する逮捕令状に基づいて行う逮捕です。
最も一般的な逮捕で、逮捕の原則型とも言えます。

「緊急逮捕」は、一定以上の重罪に該当し、緊急を要する場合に認められる逮捕です。
緊急逮捕をしたらその後直ちに裁判官に逮捕令状の発行を求める必要があります。

「現行犯逮捕」は、現行犯(犯行中の者、犯行直後の者)または準現行犯(一定の要件に該当し、犯行後間もない者)に対する逮捕です。
逮捕令状は必要なく、捜査機関でない一般人でも犯人を逮捕することができます。

逮捕された場合、釈放されなければ48時間以内に検察官に送致され、勾留という次の段階に進みます。
ちなみに、逮捕による身柄拘束を解くための異議申立、不服申立の手続は存在しません
そのため、逮捕されてしまったら勾留以降の手続で身柄解放の方法を検討することになります。

では、逮捕される「前」にすべきことはあるでしょうか。
緊急逮捕と現行犯逮捕については、「そもそも犯罪行為に走らない」以外の対処法がありませんので、通常逮捕を念頭に検討します。

捜査機関が通常逮捕を行うには、
「逮捕の理由(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)」

「逮捕の必要性(逃亡のおそれまたは罪証隠滅のおそれ)」
の有無を裁判官に判断してもらって、逮捕令状を発行してもらう必要があります。

しかし、裁判官の令状審査はフリーパス同然で、余程のことがなければ逮捕令状はそのまま発行されます。
そのため、被疑者側が手を打つとすれば、捜査機関が逮捕令状を請求する前、となります。

捜査機関にとって、被疑者を逮捕するメリットは次のようなものです。

・被疑者を監視下に置いて逃亡や罪証隠滅の可能性を軽減できる。
・捜査機関の都合のいい時に取り調べができるようになる。

その一方で、逮捕や被疑者勾留には時間制限があることから、

・逮捕してから2~3週間程度以内に捜査を完了させて処分を決めなくてはならない。

というデメリットもあります。

つまり、時間制限のある逮捕という手段によらなくても上記メリットを実現できることを示せばいいのです。

具体的には、
「捜査機関の出頭要請があれば必ずこれに従う」
「事情聴取の際には聞かれたことに素直に正直に答える」
「罪証隠滅を疑われるような行動を取らない」

といった対応を取ることが逮捕回避のために重要となります。

もちろん、こういった対応を取っていても、逮捕されるときは逮捕されます。
しかし、人身事故等の交通違反や、痴漢等の比較的軽微な犯罪は、上記対応で逮捕の可能性を大きく下げることができます。
また、並行して被害者との示談を進めることも逮捕回避に繋がります。

次回は「勾留」の手続について見ていきます。