弁護士コラム

未払い残業代請求の流れ(1)~残業代が発生するケース~

2016.06.15

残業代や基本給、手当といった給与をきちんと払ってもらえない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

残業代の未払い、不払いが起きているときに問題解決に向けて取るべき手順等について、とりあえず最も多いパターンである「未払い残業代」を取り上げて、何回かに分けて説明していきたいと思います。

そもそも、「残業代」とは何でしょうか。
世間で言われる「残業代」というものは、法律用語で言えば「時間外、休日及び深夜の割増賃金」となります。

ざっくり言うと、
「一定の制限を超えて働いたり、休日や深夜に働いたりした場合には割増賃金を支払わねばならない」
というルールが法律上定められており、この割増賃金が俗に「残業代」と呼ばれているのです。

とりあえず細かい例外は割愛するとして、割増賃金(残業代)の支払い義務が生じるのは以下の場合です。

(ア)1日8時間(休憩時間除く)以上働いた場合、8時間を超えた部分の労働について25%の割増賃金
(イ)週40時間(休憩時間除く)以上働いた場合、40時間を超えた部分の労働について25%の割増賃金
(ウ)22時から5時までの間に働いた場合、その時間帯の部分の労働について25%の割増賃金
(エ)休日(法定休日。曜日とは無関係。)に働いた場合、その日の労働について35%の割増賃金

これだけ見れば残業代は簡単に計算できそうですが、実際はそう簡単にいきません。
例えば、多くの会社員のように月給制の場合は所定の計算方法に従って月給を時給に換算する必要があります。
また、時間外労働と深夜労働、休日労働と深夜労働は重複した割増率が加算されるが、時間外労働と休日労働が重複しても35%の割増にしかならない、というように計算の修正が必要となります。
専用の計算ソフトを使わねば残業代の算出だけでものすごい時間と労力がかかりますので、具体的な金額の計算は法律相談した際に弁護士に任せてしまった方がよいです。

とりあえず、自分の勤務実態と給与明細をチェックして、

「1日8時間以上または週40時間以上働いている」
「22時以降に働いている」
「週に1日以上の完全な休みがない」

といった勤務状況で、

「給与明細に『残業代』『時間外手当』等の項目がない」
「『残業代』『時間外手当』の項目はあるが毎月定額で金額が低い」
「実際の勤務時間と異なる時刻にタイムカードを切らされる」
「そもそも会社にタイムカードがなく、まともに労働時間を管理していない」

という場合には、未払い残業代が発生している可能性を疑った方がよいでしょう。

未払い残業代が発生しているとなれば、次にこれをどういう手続で請求するかということが問題となります。
次回は、「未払い残業代をどのように請求するか」ということを見ていきます。