弁護士コラム

弁護士が嫌がること

2015.11.12

ウェブマスターツールを利用すると、HPの閲覧者がどのようなキーワード検索で流入してきたのかを見ることができます。
当事務所のHPだと、
「交通事故 弁護士 大阪」 「交通事故 弁護士 メリット」 「労働問題 弁護士 大阪」
といったものが件数として多いのですが、1つ気になるキーワード、
「弁護士が嫌がること」
というものがあったので、これについて少し触れてみたいと思います。

一般に、弁護士が嫌がりそうな事件はいくつか考えられますが、ざっくり分類すると次のような感じでしょうか。

①弁護士の利益に関する問題(係争額が低くて弁護士報酬が少ない事件等)
②事件の難易度に関する問題(事実関係が複雑で処理に多大な労力を要する事件等)
③事件の手続に関する問題(受任手続に公的機関が関与してくる事件等)
④人の性格に関する問題(依頼者や相手方が厄介な性格の人である事件等)

何を嫌がるかはその弁護士、法律事務所の考え方によります。
例えば、「ある程度以上の後遺障害のある交通事故事件以外は受けない」という方針を立てているなら①重視。
「高齢なので複雑な事件はしんどい」と考えているなら②重視。
「誰かの紹介がなければ受任しない」という弁護士なら④重視、というようにです。

私自身について言えば、①②③の問題を感じたことはあまりありません。
仕事をしていて嫌なことがあるとすれば④、といったところでしょうか。

④の中でも、依頼者に関するもの、相手方に関するもの、その他関係者に関するものがあります。
依頼者に関するものとして、実体験から挙げられるのはこんなところです。

・感情をコントロールできず、弁護士のアドバイスを聞き入れない。
・必要な資料を準備せず、弁護士の連絡も無視し、事件処理が長期間停滞してしまう。
・自身が同意して成立させた和解に難癖をつけて報酬を値切ろうとする。

長く法律相談をやっていると、問題のありそうな依頼者は口調や振舞いから何となくわかってきますので、これはやばいと思ったら丁重にお断りします。
また、依頼者が受任時に説明したことに重大な嘘があった場合や、依頼者が事件解決に協力してくれない場合には辞任手続を取ることもあります(このような理由で実際に辞任に至ったのは全体の1%にも満たない件数ではありますが。)。

相手方に関するものとしては、こういったものがあります。

・相手方本人が対応し、意味不明な超理論を展開したり、凄んできたりする。
・相手方に性格に難のある弁護士がついて横柄な態度で変な交渉をしてくる。
・相手方に財産がない。

相手方本人が対応してくる事件は、法的に通らない無意味な主張をしてくることが多いので話が噛み合わず疲れますが、裁判を起こせば勝訴判決は結構簡単に取れるのでその点は楽です。
個人的に、50代以上の弁護士が単独で出てきた事件は基本的にハズレと思ってげんなりします。複数受任で若い弁護士とセットで出てくるときはいいのですが、何故か年配の弁護士が単独で出てきたときは上から目線で幼稚な交渉を展開してくることが多く、ストレスが溜まります。
「払う金がない」というのはある意味最強の抗弁なので、相手方が無資力だと勝訴判決も絵に描いた餅にしかならず、依頼者に対して申し訳ない気持ちになります。

その他関係者に関するものとして、病院関係者や役所の人との協議が必要となることがあります。
たまに、弁護士に対して敵意むき出しで対応してくる人がおり(前に関わった弁護士が余程ろくでもない人間だったのでしょう…)、気を遣うことがあります。
大体は、丁寧に対応していると、「この弁護士は自分の知っている弁護士とは違う」と態度を和らげてくれますが。

「弁護士が嫌がること」で検索している人が、弁護士に嫌がらせをしたいのか、相談前に不安を抱えているのかはわかりませんが、概ねこんな感じです。
何の仕事でもそうでしょうが、理屈の通じる常識人とのやり取りは心穏やかに進むでしょうし、我儘で非常識な人とのやり取りはお互い精神を削られて更なる衝突を生むのではないか、といったところです。