弁護士コラム

憶えたてのキミの番号

2014.02.19

突然ですが、皆さまは自分の自宅やケータイ以外の電話番号をいくつ覚えているでしょうか。

♪ とにかく公衆電話まで行こう 確かコンビニが近くにあった
憶えたてのキミの番号 もうソラで言えるかな!? ♪

槇原敬之が『雷が鳴る前に』でこう歌ったのは1992年、もう22年も前のことです。
ケータイやスマホが発達した今、連絡先は記憶するものではなく、メモリ任せという人がほとんどでしょう。

普段の生活ではそう問題ありませんが、連絡先を覚えていないことでとても困ってしまう場合があります。
それは、警察に身柄拘束されて一定の条件が揃ってしまったときです。

逮捕されて警察署に連行された場合、身柄拘束されたことを家族等に連絡してもらうことができます。
ここで覚えている番号がなく、更にケータイを使えない状況にあったりすると。
連絡してもらえないので、当然周りは逮捕の事実を知り得ないことになります。

その後、弁護士が刑事当番等で接見に行った際に、外部の人間への伝言があるか聞くのですが…

「○○に面会に来るように伝えてください。電話番号?覚えてません。でもケータイには登録してあります。」

と言われることがよくあります。

この場合、取り得る対応は概ね次の3パターンです。

①刑事に被疑者のケータイを操作して番号を弁護士に伝えるようお願いする
②被疑者がケータイを宅下げして、弁護士が番号を控えてから差し入れする
③捜査の過程で警察官に上手いこと何とかしてもらう

この中では①が比較的楽なのですが、警察署によってやってくれる場合と断られる場合があります。
なぜ署によって対応が違うのか疑問でしたが、最近、留置管理課の警察官から話を聞いて理由が判明しました。

「以前そういう対応を取ってやったら、『警察官がいじってケータイが壊れた』と難癖付けられて、以後禁止となった。」

うーん、さすが大阪、ヤカラに死角なし。
比較的緩い警察署だとこれで教えてくれることもありますが(それでも渋ります)、断られることの方が多いです。

①がダメとなると、次は②です。
宅下げ+差し入れの手続を取るのが若干面倒ですが、宅下げさえできれば目当ての番号はわかります。
ところが…ケータイが証拠品として押収されていると、還付されるまで宅下げができないのです。

また、私は未経験ですが、『宅下げできたが電源が切れていた』場合。
充電できる場所を探さねばなりませんが、多くの弁護士が当番接見に行くであろう夜間はショップも閉店しています。
となると、一旦持ち帰って翌日以降ショップ等に行き、後日改めて警察署まで差し入れに行くことになるのか…
被疑者国選ならともかく、不受任なら費用も出ないのに時間と交通費を費やす羽目になるという恐ろしい事態に。

最後の手段が③です。
例えば、取り調べで警察官が『参考として』ケータイを被疑者に提示する。
ケータイのメモリを開いて任意の連絡先を被疑者が確認する。
被疑者がその番号を読み上げて、「ここに連絡してください。」と言う。
これを受けて、警察官がその連絡先に逮捕の事実等を電話する。

やってくれるかどうかは担当の刑事次第です。

面会や差し入れを家族に頼みたい。
しばらく欠勤することを勤務先に伝えたい。
それなのに番号がわからず連絡ができない、というのはかなり歯痒いはず。

万一に備えて、せめてどこか1か所くらいは、キミの番号をソラで言えるようにしておくことを推奨します。