弁護士コラム

正義の味方?

2013.08.09

弁護士を「『○○』の味方」というとき、どんな言葉をイメージするでしょうか。

この仕事をしていると、稀に「弁護士は正義の味方、弱い者の味方じゃないんですか。」と言われることがあります。
これを言うのは大体が弁護士を雇わずに本人で対応している民事事件の相手方なのですが、相手方からこう言われたときには「違います。」とはっきり答えています。

弁護士は、争いごとに巻き込まれたかわいそうな人を嗅ぎ付けてヒーローよろしく参上するものではなく、問題を抱えた依頼者の相談を受けて初めて動くものです。
言うなれば傭兵のようなものですから、原則として雇い主である依頼者のために戦うのが当たり前なわけです。
無論、全員が同一のギルド(日弁連)に所属しており、信義に則り品位を保つ等の制限が課せられているといった点が傭兵とは異なりますので、「金を払ってくれる依頼者のためなら何でもやる」というわけではありませんが。

正義や弱者といった言葉は、非常に使い勝手のいい便利な言葉です。
例えば、民事事件は双方の言い分が異なるから争いになっているのであって、ほとんどの場合はどちらも自分こそが正しいと思い込んでいます。
また、弱者というのは定義が曖昧で主観的な言葉です。
お互いが「自分が正しい」と思い込んでおりますので、弁護士が正義の味方だと勘違いしていると、「弁護士なのに悪い奴(相手方)に肩入れして自分の言い分を聞いてくれない。」と不満を抱くこともあるというわけです。

民事事件に関していえば、弁護士は代理人であり、本人に代わって矢面に立って戦っているだけですから、対立する相手方からすれば基本的には敵です。
明らかにおかしなことを言っている依頼者や反社会勢力の尖兵となるべきではないとの制約はありますが、それを超えて敵も含めた万人に分け隔てなく公平な立場で仕事をするわけではありません。

多くの事務所がHP等で「あなたの味方」という言葉を掲げておりますが、これは「(依頼者となった)あなたの味方」という意味です。
ですから、少なくとも相手方の弁護士に対しては過度の甘い幻想は抱かない方がよいでしょう。

(『蒼生 7月号』掲載記事)