弁護士コラム

慰謝料のお話

2012.12.21

先日、ジョニー・デップが事実婚解消の慰謝料として120億円用意したとニュースになっていましたが、今回は知っているようで意外と知らない「慰謝料」についてのお話をしたいと思います。

離婚したり何かの被害を被ったりしたら当然に慰謝料がもらえるものだ、と勘違いしている人は意外と多いようです。以前、「私(妻)の不倫が原因で離婚することになりました。旦那からいくら慰謝料もらえますか?」とネット上で質問した方が大いに話題に上ったこともありました。「慰謝料=個人間で問題が起きたときにもらえるお金」との認識が世間では広まっているのかもしれません。

法律家の世界では、慰謝料とは「精神的損害(苦痛)に対する賠償」のことを指します。「相手の行為に起因する苦痛に対する賠償」ですから、被害者が苦痛を感じていない、不法行為と苦痛に関連性がない、苦痛が完全に解消された、といった場合には、原則として慰謝料請求は認められないこととなります。

また、怪我をさせられた、浮気をされた、という場合には精神的損害は認められやすいですが、愛車を傷つけられた、思い出の品を失った等、財産権が侵害されたに過ぎない場合には、修理費や買い替え費用を賠償すれば十分と考えられているので、よほどのことがないと慰謝料請求は認められません。

裁判では謝罪を強制することはできないので、最終的にはお金で決着させるしかないのですが、心の傷をお金に換算するのは非常に難しいことです。冒頭の120億円の話に戻ると、あれは慰謝料というよりは財産分与または解決金の色合いが濃いもののようですが、本当の意味での「慰謝料」だとしたら…120億円に相当する心の傷とは一体どんなものなのか、想像もつきません。大金を得たとしても、それで新たに失うものも出てくるでしょうし、やはり気持ちの問題は気持ちで解決したいものです。

(『蒼生 7月号』掲載記事)