賃貸か所有か。戸建てかマンションか。
住居としてどんな形態を選ぶのが良いかという論争はなかなか尽きることがありません。
世の記事は経済性から優劣を付けるものがほどんどですが、ここはひとつ法的観点から有利不利を考えてみましょう。
まず「賃貸か所有か」だと「賃貸」に軍配が上がると考えます。
賃借人の権利は借地借家法でかなり強力に守られているからです。
賃料を払う、物件を大事に扱う、この当たり前のことを守っていれば賃借人が一方的に追い出されることはそうありません。
それにもし近隣トラブル等が発生した場合でも持家に比べれば転居による避難が容易です。
次に「単独所有か共有か」、これは圧倒的に「単独所有」です。
共有の物件は原則として全所有者の同意がなければ売却や賃貸に出すといった「処分」ができません。
共有はペアローンや相続で生じることが多いですが、共有状態を発生させた時点で紛争のドロ沼に片足を突っ込んだものと考えてください。
そして「戸建てかマンションか」、
これは「戸建て」かなというところです。
マンションは「共用部分」の問題が不可避なので。
マンションにはエントランス、廊下、エレベーターと必ず共用の部分があります。
老朽化したマンションの修繕が必要なのに住民らの意見が割れて修繕に取り掛かれないという問題はこれから山ほど出てくるはずです。
以上から法的に見ると最も有利なのは「戸建て賃貸」で、最も不利なのは「マンション所有(共有)」となりそうです。
あくまで権利の法的な特徴に着目したもので、高齢者は賃貸物件への入居を断られやすいとか、処分するときにマンションの方が買い手がつきやすいとかいった点は考慮していません。
ちなみに「他人所有の借地上に自己所有の戸建て」というのは法的には最悪の手法です。
一見いいとこ取りのようですが、契約の終わらせ方や更新にいくつも縛りがあります。
最も問題なのは、借地人が契約を一方的に終了させることができず、十年二十年と無駄な地代を払い続けなければならなくなるという事態が発生し得る点です。
相続でこういう物件が出てきたら十分に気を付けてください。
どこのどんな家に住むかというのは人生に大きな影響を与えます。
家選びに際して法的な視点に着目するとこんな風になります、というお話でした。
(『蒼生 2021年10月号』掲載記事)