新型コロナウィルスは日本経済に大きな爪痕を残しました。
今回はこの現状に鑑みて、借金の法的整理についてのお話です。
債務整理の手続としては「任意整理」「民事再生(個人再生)」「破産」の三つがあります。
「任意整理」は債権者と交渉して原則5年以内での弁済計画を新たに立て直す手続。
「民事再生」は裁判所に弁済計画案を提出して会社や持ち家を処分せず手元に残したまま借金の額を5分の1に圧縮して原則3年間で弁済する手続。
「破産」は裁判所に申立を行ってプラスの資産もマイナスの借金も全てリセットすることを目指す手続。
適性をざっくりと述べると「弁済期間を延ばせば完済できそうなら『任意整理』」、「安定した収入があって会社を潰したくない、持ち家を手放したくないなら『民事再生』、「借金を返す目処が立たないなら『破産』」といったところになります。
債務整理を検討する人がよく心配するのが「破産の事実が周囲に知られるのでは」「自分の仕事や子どもの将来に影響が出るのでは」ということ。
しかしこれらは無用の心配です。
民事再生・破産の手続を取ると官報に掲載されますが、官報をわざわざチェックするような暇人はそういません。
任意整理なら官報に載ることすらありません。
「ブラックリストに載って数年はローンを組んだりクレジットカードを作ったりできなくなると聞いた」
これはそのとおりですが、借りたお金を返すという約束を守れなかったわけですから貸し手が情報を共有して防衛策を取るのは当然のことです。
再び借金で失敗することの回避にも繋がるわけですからおとなしく受け入れましょう。
どの債務整理手続も
「債務者を立ち直らせてもう一度社会経済の輪に加わるチャンスを与えること」
を目標としています。
「怖い」「恥ずかしい」「迷惑をかけたくない」と二の足を踏む人もいますが、時間が経つほどに状況は悪化するだけですし、先延ばしにする方が債権者に迷惑をかけることになります。
「借金は所詮お金の問題でしかない」
ということを忘れないでください。
借金を苦に自らの命を絶つ理由などどこにも存在しません。
借金は容易に解決できる問題なので、自分の中で勝手に悩みを大きくせず早めに弁護士に相談してください。
(『蒼生 2020年7月号』掲載記事)