昨今ニュース等で取り上げられることの多いあおり運転。
あおり運転にはどのような法的問題があり、どう対処するのが適切なのでしょうか。
あおり運転とは、極端に他の車両との車間距離を詰めたり幅寄せを行ったりする、執拗に追い回す、進路上に割り込んで急ブレーキを踏むといった危険な運転を行って他の車両を煽る行為の総称です。
罵声を浴びせる、車を止めさせて暴力を振るう等の行為を含むこともあります。
これらの行為に及んだ場合、まず問題となるのは刑事上の責任です。
例えば車間距離を詰め過ぎれば『車間距離不保持』、危険な幅寄せを行ったり罵声を浴びせたりすれば『暴行』、被害者が死傷すれば『危険運転致死傷』『傷害』『殺人』といった罪が成立することがあり得ます。
東名高速で停車させられた被害者が死亡した事件では『監禁致死』の適用も検討されました。
また、車をぶつけたり被害者を死傷させたりすれば民事上の損害賠償責任も問題となります。
あおり運転を受けた場合、最優先で考えるべきは『死傷に繋がるような被害を避けること』です。
具体的には「逃げる」「車外に出ない」「窓やドアを開けない」「警察に通報する」といった対処となります。
もし逃げ切れず、降車した相手が近付いてきて車体を叩く等してきても、車内に籠っていれば身の安全は確保できます。
車体は人間の腕力でそう簡単に破壊できるものではなく、車が多少損傷してもそんなものは後からどうにでもなります。
その上で110番通報して警察の到着を待ち、可能ならスマホ等で相手の顔や暴行の状況を撮影してください。
その後の刑事・民事の手続のことを考えると、前方・後方を録画できるドライブレコーダーを予め車に搭載しておくのがお勧めです。
これがあれば一般的な交通事故の際の事故状況確認にも使えるので有用な設備投資といえます。
あおり運転をする人間は逮捕後に決まって「相手が先にあおり行為や危険な運転をした」という言い訳をします。
残念ながらその言い訳は通用しません。
警察はあおり運転の取締りを強化していますし、世間の目も厳しくなっています。
あおり運転の代償は想像以上に重いので、自動車を運転するときは危険な乗り物を扱っているという自覚を持ち、些細なことでイライラせず、安全遵守に努めてください。
(『蒼生 2019年10月号』掲載記事)