弁護士コラム

法律文書の和暦表記

2019.04.17

明けましておめでとうございます。
年が明けて新たな一年が始まりました。

今年の5月には改元が予定されており、これが平成最後の年始となります。
新元号の公表時期は改元の1か月前が想定されているとのことで、新しい元号がどのようなものになるのかが話題に上る機会も増えてきました。

さて、元号の変更というのは法律家にとってそれなりに重要な意味を持ちます。
裁判所での事件管理は和暦ベースでなされ、各種公文書で時期を表示するときは基本的に和暦が用いられるからです。

例えば、訴えが提起されると『平成31年(ワ)第〇〇号』といった形で事件番号が割り振られます。
改元後に受理された事件はこの頭の部分が変わることになります。

また、判決書は公文書なので原則として和暦が用いられます。

弁護士が作成する訴状や準備書面といった法律文書もこれに合わせて和暦で時期を表記することが多いです。

「公文書は和暦で表記しなければならない」という法令があるわけではなく、和暦表記は単なる慣行です。
公文書に西暦を併記することや西暦表記に統一することの是非が最近政府内で検討されたようですが、従前のままでいく方針で固まりました。

法律文書の和暦単独表記の是非については弁護士の間でも意見が分かれているようです。

否定派は和暦の不便さを挙げることが多いです。
期間や時期、年齢が争点に絡んでくるようなケースでは西暦だと単純な引き算でぱっと計算できるが和暦だと余計な計算が増える、海外が関係してくる事例だといちいち和暦と西暦を対照させなければならない、そういった手間を考えると和暦単独表記は合理的でない、という理由によるものです。

肯定派は日本の公文書なのだから和暦で当り前、キリスト教文化に基づく西暦に合わせる必要性がない、今はアプリで簡単に計算もできるし換算の手間など知れている、という意見が多いようです。

合理性を重視する否定派、文化や伝統を重んじる肯定派、といったところでしょうか。

ちなみに私が見聞きしている限りでは「どっちでもいい派」が最大派閥で、私もこの意見です。
西暦単独表記が色々と楽になってすっきりはするのですが、和暦の持つ厳粛重厚な雰囲気が裁判や法律という堅いものにはよく似合うように感じられますので。

(『蒼生 2019年1月号』掲載記事)