前回記事「弁護士が解説する刑事事件の流れ(9)~控訴・上告~」で、終局的な判決確定までの手続に触れました。
今回は、刑事裁判のやり直しである「再審」についてです。
決められた期間内に控訴や上告をしなかった場合や、控訴審や上告審の手続が全て完結した場合に判決は確定します。
確定した判決はもうそれ以上争うことができない。
それが大原則ですが、これに対する例外措置が「再審」です。
確定した判決の当否を争うとなりますので、再審が認められるのは極めて限定的なケースとなります。
①判決の基礎となった証拠が偽造であることが別の裁判で明らかとなったとき
②判決の基礎となった証言が虚偽であることが別の裁判で明らかとなったとき
③告訴をした被害者が虚偽告訴で有罪とされたとき
④判決の基礎となった他の事件の裁判が変更されたとき
⑤特許権侵害等の罪で、その権利を無効とする審決や判決があったとき
⑥無罪等を言い渡すべき明らかな証拠が新たに出てきたとき
⑦裁判官等が判決に関して犯罪行為に及んだことが別の裁判で明らかとなったとき
このいずれかに該当する事情がある場合には、再審の請求をすることができます。
再審請求をするのに期間的な制限はありません。
懲役刑を満了した後でも、被告人が死亡した後でもすることができます。
再審の結果無罪となれば刑事補償を受けることができますし、死者であっても名誉回復の必要はあるからです。
ただ、再審を開始してもらうための道のりは果てしなく遠く険しいと言わざるを得ません。
一度徹底的に裁判で争ったはずの事件を再びやり直そうというのです。
前記①~⑦に該当するような極めて特殊な事情がなければ扉は開きません。
再審が開始されると、証拠の再検討等を行って事件を洗い直していくことになります。
時折報道される再審事例では⑥のものが多いと言えます。
再審が始まったとしても、審理の結果、やはり従前と同じ結論となることもあります。
その場合には、その再審結果に対する控訴や上告を検討することとなります。
再審を行って、元の有罪判決が無罪と改められた場合。
この場合は当然に無罪の判決を言い渡すこととなります。
この結果は、官報だけでなく、新聞紙に掲載して判決を公示しなければならないとされています(刑訴法453条)。
社会的に大きな意味を持つ出来事なので新聞で広く国民に知らせないといけないということです。
ちなみに、死刑囚が再審請求する割合は他の刑と比べて高くなっています。
これは刑の重さによるところもあるでしょうが、
「再審請求中は死刑が執行されない慣習があるから」
とも言われています。
もっとも、これは絶対的な決まりではなく、単なる慣習です。
再審請求中に死刑が執行されたこともあり、再審請求を続けていればいつまでも死刑執行されずに済むというわけではありません。
以上、10回にわたって刑事事件の流れについて概要を解説してきました。
個別の論点については、また機会があれば別の記事で掘り下げたいと思います。