弁護士コラム

弁護士が解説する刑事事件の流れ(7)~被告人勾留・公判~

2017.08.14

前回の「弁護士が解説する刑事事件の流れ(6)~保釈その2~」では保釈の説明を一通り終えました。
今回は保釈の前提となる被告人勾留に少し触れて、それから公判の流れを説明します。

被疑者の段階で身柄拘束(被疑者勾留)されていた場合、起訴されて被告人になっても普通は勾留が続きます。
ただし、起訴後は身分が「被疑者」から「被告人」に変わることから、起訴後の勾留は「被告人勾留」と呼ばれます。

被告人勾留は刑事裁判を追行するのに必要な身柄拘束です。
そのため、期間制限は被疑者勾留より遥かに長くなります。
期間制限は2か月、ただし必要性があれば1か月ずつの更新が認められます。
簡易な自白事件なら大体起訴から2、3か月で判決となりますし、否認等している重大事件ならほぼ無条件に更新の必要性が肯定されます。
ですから、公判が終わるまで被告人勾留による身柄拘束は続くものだと考えておいてください。

それを解くための現実的に有効な手段が、前回、前々回で触れた「保釈」というわけです。

さて、公判の流れですが、よくある簡易な事件を例にとってざっくり説明すると、次のような流れで進みます。

起訴

第1回公判期日
・人定質問(被告人の住所、本籍、氏名、生年月日、職業を口頭で確認)
・罪状認否(検察官が罪となる事実を読み上げ、被告人はそれに誤りがないか述べる)
・冒頭陳述(検察官が事件の経緯等を述べる)
・検察官立証(検察官が立証しようとしている事実や証拠について述べ、書証等の証拠調べを行う)
・弁護側立証(弁護側が立証しようとしている事実や証拠について述べ、証人尋問や被告人質問を行う)
・論告(検察官が判決や刑罰の内容についての意見を述べる)
・弁論(弁護人が判決や刑罰の内容についての意見を述べる)
・被告人の意見陳述(最後に何か言いたいことがあれば被告人が自分で述べる)

第2回公判期日
・判決言渡し(裁判官が判決の内容とその理由を述べる)

起訴から第1回公判期日までの間に、被告人は弁護人と公判の打ち合わせを行います。
主な打ち合わせ内容は、被告人質問の内容確認や予行演習です。

第1回公判期日で被告人がやるべきことは次のことです。

・人定質問で住所、本籍、氏名、生年月日、職業を述べること
・罪状認否で読み上げられた事実に誤りがないか回答すること
・被告人質問で弁護人、検察官、裁判官から質問された内容に答えること
・最後に何か言っておきたいことがあればこれを述べること

どれもそう難しいものではないのですが、人定質問の「本籍」は時々詰まる人がいます。
不安があれば本籍は事前にしっかり確認しておいた方がいいかもしれません。

ちなみに、人定質問でスムーズに答えられなかったとしても、裁判官が
「あなたの本籍地は〇〇で間違いないですか」
と起訴状記載の情報を読み上げてくれるので、現実的にほとんど問題はありません。

被告人の意見陳述では、反省の言葉や今後の更生について述べることが多いです。
何も言わなくてもいいですが、言いたいことがあれば30秒程度で話せることを用意しておいてもいいでしょう。
否認事件等でごく稀に裁判官、検察官、弁護人への不満や非難を延々と語る人がいますが、これは無意味どころか量刑に不利に働くだけなので、そういうことはやらない方よいです。

次回は「判決」について述べます。