弁護士コラム

民泊をめぐる法律問題(1)~民泊が注目される背景事情~

2017.06.16

昨今、「民泊」という言葉を目にする機会が増えてきています。

「民泊」とはどういうものなのか。
違法行為なのか、適法行為なのか。
法律上、どのような問題点や注意点があるのか。

何回かに分けて見ていきたいと思います。

「民泊」というのは、元々は「民家に宿泊する(させる)こと」の意です。
もっとも、近年問題となってきているのは、「宿泊料を徴収して観光客等を自宅や賃貸物件に宿泊させるビジネス・副業」のことを指しますので、この記事ではこの意味に限定して「民泊」という言葉を使います。

「民泊」というものが注目を集めるようになった背景事情はいくつかあります。
その中で最も大きなものは次の2つです。

・日本を訪れる外国人観光客の急激な増加
・既存宿泊施設の収容能力不足

直近2016年の年間訪日外国人観光客の2403万9053人(日本政府観光局統計データ)。
10年前、2006年の年間訪日外国人観光客数、733万4077人から実に3倍以上の増加です。

この急激な訪日外国人観光客の増加にホテルや旅館等の宿泊施設の収容能力拡大が追い付かず、宿泊施設確保の代替的手段として、あるいは訪日外国人観光客のニーズ(主に料金面での要望)に応える形で、「民泊」が注目を集めるようになってきているのです。

日本を訪れる外国人観光客を増やすことは、国家戦略としても取り上げられています。
旅館業法の特例として適法に民泊を行えるようにするための法改正を行う、といったものがその表れです。

しかし、法律の改正・制定も、訪日外国人観光客増加のペースに追いつかず、ビジネスチャンスの到来とばかりに民泊に手を出す人が増えてきていることもあり、法的にはかなり微妙、というよりむしろ問題のある状況が目に付くようになってきている、というところです。

次回から、民泊を規制する法律の概要と、民泊を取り巻く法律問題について順次触れていきたいと思います。