今回は「交通事故」について。
車社会の現代日本では、誰もが交通事故の加害者・被害者となる可能性を有しており、交通事故損害賠償問題の当事者となり得ます。
交通事故の損害には「物損」「人損」があり、人損は積極損害(治療費等)、消極損害(休業損害等)、精神的損害(慰謝料)に分けられます。
交通事故に遭った場合、被害者も加害者側の保険会社に損害額の計算を任せてしまうことがほとんどでしょうが、「慰謝料」の算定基準には低い方から順に
①自賠責基準
②任意保険基準
③弁護士(裁判所)基準
の3つがあり、保険会社は低い基準である①または②の基準の賠償額を提示してくるということには注意が必要です。
保険会社は被害者の味方ではなく、保険加入者に代わって賠償する営利企業に過ぎず、支払いを抑えた方が得ですので、これは当たり前といえば当たり前なのですが。
②と③でどのくらい違うかと言うと、死亡慰謝料や後遺障害慰謝料を同じ等級で比較して、約1.5倍~3倍、大体50万円から1800万円もの差が出てきます。
では、どうすれば③の基準の慰謝料を支払ってもらえるのか。
意外と簡単で、被害者が弁護士を付ければ、保険会社は③に近付いた賠償額を提示してきます。
弁護士に交渉させるということは訴訟を見据えているという態度の表明になり、訴訟になれば当然③の基準が適用されるので、保険会社も折れやすくなるということです。
弁護士に依頼すると言っても費用が気になるかもしれませんが、最近は保険会社が弁護士費用を300万円まで負担してくれる「弁護士費用特約」付の保険が一般的になっています。
加入率は7割と高く、契約者のみならず配偶者や家族でも使えて適用範囲がかなり広いのですが、知名度が低く、あまり利用されていないのが実態です。
事故に遭ったとき、家族の誰かが自動車保険に入っていたら、弁護士費用特約の有無を一度チェックしてみてください。
また、交通事故事件は保険会社からほぼ確実に賠償金を回収できるので、私の事務所も含めて、着手金完全無料としている法律事務所もあります。
交通事故は弁護士の有無で大きく結果が変わり、法的手続を利用しやすい環境も整っているので、積極的に弁護士を活用すべき事件と言えるでしょう。
(『蒼生 10月号』掲載記事)