弁護士コラム

借金問題を相談するタイミング

2014.08.25

借金には「良い借金」と「悪い借金」があります。
「良い借金」とは、「利益を生むための借金」、事業のための借入などが典型と言えるでしょう。
「悪い借金」とは、「浪費のためだけの借金」、虚栄心を満たすためだけの将来性のない借金などです。

債務整理等をどのタイミングで弁護士に相談するべきかというのはなかなか悩ましい問題です。
「悪い借金」の場合、段々借入と返済のバランスが取れなくなったり、場合によっては最初から全く計画性が破綻していることもありますので、早ければ早い方がいいとなります。
もっとも、「悪い借金」をしている人が早い段階から借金を相談することはほとんどなく、どうにも手のつけようがなくなってからやっと相談に行くというケースが9割以上を占めます。

一方、「良い借金」の場合、事業等がうまく回って返済にさほど支障が出ていない限り、これは問題となりません。
ただ、売掛金の支払いが遅れたり、何らかの急な支払が必要になったりしてサイクルに乱れが出たからといって、これに過度に反応するのは禁物です。
「良い借金」の借入先は事業等の適切な資金サイクルに不可欠な存在であることが多いので、その信用を失うような行動は避けるべきですが、弁護士が出ていくことが信用失墜につながることも大いにあり得るからです。
とはいえ、まともな弁護士であれば、資金繰り状況や会社の業績等も事情聴取した上で適切な方針を提案してくれるはずですから、やはり相談だけは早めにしておくのがよいでしょう。

未だに弁護士には、「敷居が高い」「ものすごい料金を請求されそう」「怒られそうで怖い」というイメージが根強くあるようで、本当にどうしようもなくなってから相談に来られる方が少なくありません。
例えば、個人であれば法テラスを利用して破産することもできますが、法人の場合には法テラスを利用できません。
そのため、末期状態になってから相談に来て、破産申立費用を用意することもできないために会社を放置するしかないという状況に追い込まれることもあります。
もう少し早く相談に来てくれたら民事再生も可能だったのに、破産できれいに整理できたのにと思うことはよくあります。
ときには、ネットの浅はかな情報を鵜呑みにして、違法行為に手を染めてから「何とかしてください」と泣きつかれることもありますが、そうなってはさすがにどうしようもありません。

「良い借金」の方が問題が顕在化しづらく、手遅れになりがちになるということもあります。
真面目な人ほど、周りに迷惑をかけないように、自分でできることは自分で何とかしようともがいて泥沼にはまってしまうこともあります。
顧問弁護士や交流のある弁護士がいればそれがベストですが、そうでないとしてもここ10年ほどで弁護士業界は大きく変わってきていますので、「弁護士は怖くないものだ」ということで、気軽に相談に訪れる人が増えればと願っています。
借金にしても、その他法律問題にしても、怪我や病気と同じで早めの治療や対策が最良の薬です。
最近は初回相談無料の法律事務所も増えていますし、相談自体は何らマイナスにはならないので、弁護士会等もそういったところをもっとアピールしていって、予防的司法が浸透していけばよいと考えます。