弁護士コラム

弁護士の偽証教唆事件について思う

2013.04.19

時折、弁護士の不祥事が報道されますが、見も知らない弁護士の事件だと、どこか他人事のように考えてしまう部分があります。

ですが、それがよく知った、修習時代に指導を受けた弁護士のこととなると、ある種の具体的な恐ろしさとともに圧倒的な現実感を持って我が身に迫ってきます。

事件の内容や帰趨について、特にここで述べるつもりはありません。
法律家はある程度確からしい事実に基づいて、それを法規に引き直した結果を述べるべきであって、報道で流れてきた一方的・断片的な事実を基に、素人じみた無責任な見解を述べるべきではないと考えるからです。

弁護士が当事者となる刑事事件として比較的目にしやすいのは、横領、性犯罪、薬物事犯といったところですが、今回問題とされている「偽証教唆」は、これらと少々性質を異にするところがあります。
それは、これが弁護活動の一環としてなされる行為が問題とされうる、ということです。

過去にも弁護士による証拠隠滅、証人威迫という類似の事件が発生したことがありますが、そのとき弁護士会は弁護活動の正当性に関する声明を出しました。
自己の犯罪傾向を抑えられるかどうかという点にかかってくる横領等の事案と異なり、弁護活動にどう取り組むかが刑事事件の問題として扱われることに対して、弁護士会が危機感を感じたことの表れと言えるでしょう。

「細心の注意を払いながら事件に取り組む」ということ以外に、弁護士がこういった問題に対する自己防衛の手段を講じることは可能です。
実は呆れるほど単純で簡単なやり方があります。

「めんどくさそうな被疑者・被告人の刑事事件はやりたくない。」
と言って、リスクのある刑事事件を受任しないようにすればよいのです。

これで、少なくとも刑事事件の弁護活動を理由に、自身が罪に問われる可能性は完全に消し去ることができます。
無論、被疑者国選や被告人国選が必要な事件では、どこか他の弁護士が貧乏くじを引かされることになるのですが。

司法修習生は、刑事裁判・民事裁判・検察・弁護の各修習で取り扱った事件について、報告書を作成して提出します。
私の修習報告書は、他の同期の修習生と比べて、少々異質な偏りがありました。
大半の修習生が刑事事件の修習報告を1件つけられるかどうかという中で、私の修習報告書は、何件もの刑事事件、それも普通の弁護士が嫌がりそうな厄介な否認事件の報告でいっぱいになっていたのです。

重ねて言いますが、私は今回の事件の具体的な事実に触れたわけではないので、それについては何も述べません。
ただ、私は、自分の指導担当弁護士が面倒な刑事の否認事件や少年事件に精力的に取り組む姿を間近で見てきて、その方の指導を受けられたことに感謝していますし、その精神を少しでも受け継ぐことができればと思って刑事事件を続けています。

今回の事件は、弁護士は細心の注意を払って仕事に取り組まねばならない、ということを改めて強く私の胸に刻みました。
仕事に慣れてしまうことがないように、自分が取り扱っているものがある意味とても恐ろしいものであることを忘れないように、これからも日々の業務に当たっていきたいと思います。