弁護士コラム

不動産共有はトラブルの元

不動産の相談の中で結構な割合を占めるのが『共有』に絡むトラブルです。
不動産の共有状態が生じる場面は『相続』と『ペアローン』。
「相続税の申告期限も近いしとりあえず法定相続分に従って共有にするか」
「二馬力でローン組めばタワーマンションも夢じゃないね」
軽い気持ちで不動産を共有すると将来的に高確率でドロ沼にはまります。

共有最大の問題点は
「全員一致でなければ不動産全体を処分(売却)できない」
こと。
持分割合は関係ありません。
2分の1以上あろうが99%あろうが処分には全員の意見一致が必要です。

「要するに意見が割れなければいいんでしょ」という方。
残念ながら意見は割れます。
特に一部の共有者のみが物件を使用している場合(兄弟で実家を相続して兄だけがその実家に居住している等)、強固な上下関係があるか一方が極端なお人よしでない限り確実に意見は割れると断言してもいいです。

ペアローンの場合は『離婚』、この一言でこれ以上の説明は不要でしょう。

では共有不動産で処分方針がまとまらないときはどうすればよいか。
まず法律上は『共有物分割請求』という手続が用意されています。

簡単に言うと裁判所が
『現物分割(共有物を物理的に分割する)』
『換価分割(共有物を売却して代金を分配する)』
『価格賠償(特定の共有者に他の共有者の持分を買い取らせる)』
このいずれかを決定する手続です。
共有物分割請求を行えば問題は確実に解決します。
100%絶対にです。
ただし、判決の場合は基本的に競売による換価分割となるのでその物件を保有し続けたい人の希望は叶いません。
そのため一方が相手方の持分を買い取る、または共有者全員の足並みを揃えて任意売却した上で代金を分割するという和解で終わることがほとんどです。
ちなみにペアローンによる共有の場合は離婚に伴う財産分与の手続の中で処理が進められます。

その他に専門業者に持分を売却する手もありますがこの場合はかなりの安値で買い叩かれます。

共有は最初から回避するのが最善手です。
相続ならバランスを考えて遺産を用意しておく。
ペアローンなら借入方法や予算の見直し。
いずれもそう簡単な話ではないでしょうが、共有は本当に揉めるので事前検討の価値は十分あると思います。

(『蒼生 2022年10月号』掲載記事)