弁護士コラム

コロナ禍の法曹業界への影響

新型コロナウィルス感染症が登場して約1年半。
世の中の様子は大きく変わりました。
法曹業界も例外ではなく様々な影響を受けています。

一番変化を見て取りやすいのはやはり裁判でしょうか。
感染防止の手段として各地の裁判所でTeamsや電話会議によるオンラインの訴訟進行手続を導入するところが増えてきています。

実は日本の法曹界のIT化は先進国とは思えないほど遅れています。
同じアジアでもシンガポール、韓国、中国などでは随分前から裁判手続のIT化が進んでおり、ネット上の操作で提訴ができるようになっています。
また、裁判所や弁護士間の連絡手段は当然のようにeメールです。
一方、日本の場合は紙の訴状を裁判所に持参または郵送で提出する形でしか提訴ができません。
そして裁判所や弁護士同士のやり取りは何と未だにFAXがメインです。

日本の裁判のオンライン化は2022年の民事訴訟法改正でやっと一歩前進する予定のようです。
当然コロナ禍長期化の影響もあるはずで、そう考えると少々複雑な気持ちにもなります。
ちなみにこれは民事裁判の話で、刑事裁判のIT化も検討はされていますがかなり限定的です。
刑事裁判は民事裁判より手続が厳格ですし、オンラインで被告人を身柄拘束することなどできませんので。

続いて法律事務所の業務について。
弁護士ドットコムのアンケートにて約7割の弁護士が「2020年は例年と比較して新規受任が減った」と回答しています。
人や物の移動が停滞したことで法的トラブルの数自体が減少した、法的トラブルを抱えているが心理的・経済的余裕がない人が増えている、といった理由によるものではないかと思われます。

法律相談に関してはZOOMやLINEによるオンライン法律相談を実施する法律事務所が散見されるようになってきました。
しかし前記アンケートによると、弁護士への相談を考えている人のうち約75%は「法律事務所での対面相談」を第一の希望に挙げており、それ以外の場所(喫茶店や弁護士会館)での相談、電話・メール・各種アプリでの相談希望者はかなり少数派です。
私の事務所も一時期オンライン相談を検討しましたが希望者がほとんど現れないので、検温・消毒・マスク着用以外は従前とほぼ変わらず日々の業務を行っています。

(『蒼生 2021年7月号』掲載記事)