弁護士コラム

時効について①

「時効」という言葉を聞いたことがないという人はほとんどいないでしょうが、時効の内容をきちんと知っている人は少ないのではないかと思います。

民事・刑事いずれにも時効という制度がありますが、まずは民事から。

民事上の時効には時間の経過で権利を取得する「取得時効」と、権利を喪失する「消滅時効」の二種類があります。
取得時効が問題となるのはほとんどの場合が土地の所有権です。
10年または20年、所有の意思をもって平穏かつ公然に他人の物を占有することでその物の権利を取得する、とされています。
10年と20年の違いは占有開始時にそれが他人の物であると過失なく信じていたか否か、です。

例えば土地を購入したときの図面が間違っていて他人の土地にまたがって家を建ててしまったとします。
そこが他人の土地だと知らなければ10年、知っていたとしても20年家が建ち続けていれば家の下の越境部分の土地につき取得時効が成立します。

ちなみに「所有の意思をもって」占有することが要件なので、賃貸物件を20年以上借り続けてもその物件を時効取得することはありません。

消滅時効は、原則として10年間権利を行使しないとその権利が消滅するというものです。
例えば友人にお金を貸したとして、返済期限を過ぎても返済がないまま10年が経過すればその貸金を取り立てる権利が消滅してしまいます。

現行法ではこの10年の消滅時効の例外として1年、2年、3年、5年の短期消滅時効というものが定められていました。
が、これはややこしいので2020年4月からは
「権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できるときから10年、いずれか早く到達する方」
で権利が時効消滅する、と改正されることになっています。

消滅時効でよく勘違いされるのが「請求をかけ続けていれば消滅時効は完成しない」というものです。
時効を中断する方法は、

「民事裁判を提起して裁判上の請求をする」
「差押、仮差押、仮処分をする」
「相手方に債務を承認させる」

この三つのみ。

裁判外で内容証明郵便等による請求を行ったとしても、そこから6か月以内に提訴や差押をしないと時効中断の効力は生じないので注意が必要です。

次回は刑事の時効について触れます。

(『蒼生 2019年4月号』掲載記事)