弁護士コラム

弁護士業務妨害対策

先日、大阪弁護士会の研修、「弁護士業務妨害の現状と対策」に参加してきました。

弁護士は、紛争の渦中にある一方当事者の代理人となり、交渉なり訴訟なりを進めます。
紛争といっても、比較的平和で治安のよい日本国内のことですから、せいぜい相手方から不快な対応をされるとか、怒鳴りつけられるとかの程度で済むのが大半です。
しかし、稀にですが、依頼者や相手方の反感・恨みを買って嫌がらせやセクハラを受けたり、最悪の場合、死傷の結果に至ることもあります。
弁護士会では、そういった事案に対応するための委員会も設けており、今回の研修は、その委員会が開催したものです。

トラブルを起こしそうな依頼者や相手方がいる場合の情報共有、対応マニュアルの策定や逃走経路の確保といったことを、実際に起きた弁護士業務妨害事案を題材として学ぶのですが、弁護士や事務員が受任事件に絡んで死亡するに至った事案というのはさすがに数が少ないので、大体いつも同じ事案が取り上げられます。
しかし、何度目にしてもやるせない気持ちになり、いつまで経っても慣れることはありません。

ちなみに、過去の事案を見る限り、事件の相手方との関係で最も死傷の可能性が高いのは、
「離婚事件でこちらが女性(妻)の代理人に就き、相手方男性(夫)に弁護士が就いていないケース」
です。
事件の依頼者との関係でトラブルが発生しやすいのは、
「刑事事件で女性弁護士が男性被疑者・被告人の弁護人に就いたケース」
です。

事件を受任する弁護士だけの問題ではなく、事務所内にいる事務員にも関わってくる問題ですので、雇い主としてもそのような事態が起こることのないよう、常に気を配ってはいるつもりです。
とはいえ、いつ何時そういった危険な事態が発生するか、誰にもわかりません。
定期的にこういう研修を受けて、防犯意識を高めておくことが肝要と思います。

先日の研修は少し変わっており、講義が終わった後に天満警察署の柔道教官らを招いての護身術実演がありました。
手を掴まれた場合や後ろから抱きつかれた場合などに、それを振りほどいて逃走の時間を稼ぐ、非常に初歩的なものではありますが、コツを掴めば簡単に実践でき、非常に有意義な研修でした。

私は和道流空手の段位持ちで一応黒帯も拝領しておりますが、近年は定期的な修練を積んでいるわけではありませんので、いざというときに身体がきちんと反応するか、不安なところもあります。
事務所には事務員もおりますので、いざというときにはこれを護る責務もありますが、私がいないときに事が起こるかもしれません。
事務所以外で、例えば仕事帰りに痴漢等に遭う可能性もありますので、研修の翌日、早速習った護身術を事務員にも伝授しておきました。

研修の際、警察官の方もおっしゃっていましたが、大事なのは常日頃防犯意識を持ち、それを事務所全体の共通認識としておくことです。
無論、そもそも問題が起きないように備えておくことが大事ではありますが、不測の事態というのは、予測していないときに予測していない形で起きるからこそ「不測」なのです。

研修を機に、改めて気を引き締めることとなりました。
…とりあえず、最近サボりがちになっていた筋トレと棒術の鍛錬を早急に再開したいと思います。